新・司法試験基本書まとめwiki―民法(家族)

民法(家族)
このページで紹介される基本書の多くは、民法全範囲をカバーすることが予定されているものの、未だ他の分野は執筆段階にとどまるものである。

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【親族法・相続法】
窪田充見『家族法―民法を学ぶ』有斐閣(2013年1月・第2版)……法学教室同名連載を単行本化。不法行為に続くシリーズ2冊目の基本書である。設例を中心にした600ページ近い厚さだが、読んでいてニヤリとしてしまうようなユーモラスな文体と充実したコラムにより、意外とスイスイ読める。「法的ルールとしての家族法」の理解形成を目指すとのこと。内容はリークエやアルマのような共著に比べて高度であるが、理解はしやすいだろう。

前田陽一・本山敦・浦野由紀子『民法VI 親族・相続(LEGAL QUEST)』有斐閣(☆2015年3月・第3版)……平成23年の家事事件手続法制定に対応。はしがきで『双書民法』を最も意識したと述べている通り、著者らの自説を抑え、体系と条文の要件効果、判例を重視したつくりになっている。一方で、現行の法制度の運用実体や介護保険制度や信託法などの重要な関連法についてもコラム等で漏らさず述べている。また、重要な論点については丁寧に議論の積み重ねを記述しているため、わかりやすい。イメージとしては「双書民法」と「アルマ民法」の間にある基本書である。極めて「標準的」な教科書だが、個性の強い親族法の本の中では逆に珍しい。

高橋朋子・床谷文雄・棚村正行『民法7 親族・相続(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(☆2014年10月・第4版)……平成23年の家事事件手続法制定に対応。親族相続のアルマとしてオススメされるのはこちら。見解が穏当、現代的な問題点や新しい判例についても触れられている。定番。

梶村太市ほか『家族法実務講義』有斐閣(2013年4月)……早稲田ローの実務家教員と研究者教員が実務と理論の架橋・融合を目指した家族法の教科書・体系書・実務書。初学者から実務家を読者対象としている。章ごとに学習のねらいと実務上の留意点を明記。重要論点についてはCaseを用いて解説。最新のトピックやホットな話題についてColumnを設けている。タイトル通り判例実務ベースなので安心して使える。

二宮周平『家族法』新世社(2013年11月・第4版)……全24章からなる教科書。かなりリベラル色の強い価値観。自説の説明に分量を割いている部分もあるため、価値観が合わない人や判例通説をコンパクトに学びたい人には向かないか。4版においては、民法改正、家事事件手続法、H25.9.4非嫡出子差別違憲大法廷判決に対応。3版まで付されていた演習問題は別著書として出版された。『家族と法』岩波新書(2007年10月)は入門書として最適。

犬伏由子・石井美智子・常岡史子・松尾知子『親族・相続法(弘文堂NOMIKAシリーズ 5)』弘文堂(2012年11月)……女性研究者4人による共著(親族法は犬伏・石井、相続法は常岡・松尾が執筆)。平成23年の法改正を反映。要件効果の説明がわりと丁寧。判例の引用も長め。ところどころ、図表が挿入され理解を助ける。

本山敦『家族法の歩き方』日本評論社(2009年2月、2013年3月・第2版)……法セミの連載を単行本化。川井は薄すぎるが二宮は厚すぎるという人にお勧め。時事問題や代表的判例から家族法の基礎的な部分を取得することを目的とする。リークエの分担執筆担当者でもある。

有地亨『新版 家族法概論』法律文化社(2005年4月・補訂版)……家族法の権威による力のこもった体系書。制度の歴史経過などの説明が厚い。判例の引用が多いが結論のみを引用するスタイルなので、判例の事案がよくわからない。490頁。著者は2006年に逝去しているため改訂の見込みは少ない。

松川正毅『民法 親族・相続(有斐閣アルマBasic)』有斐閣(2014年12月・第4版)……論点意識せず。自説少。判例引用不正確。

吉田邦彦『家族法(親族法・相続法)講義録』信山社(2007年6月)……平井弟子による家族法講義録。

裁判所職員総合研修所『親族法相続法講義案』司法協会(2008年5月補正・6訂再訂版)……論点意識せず。判例・先例・通説で有力説皆無。索引雑。

深谷松男『現代家族法』青林書院(2001年3月・第4版)……体系書。中川善之助の愛弟子。論点意識あり。物権法で使ってる本との組み合わせによっては,かなり回しやすい。


【親族法】
大村敦志『家族法』有斐閣(2010年3月・第3版)……著者は家族法の第一人者。タイトルは家族法であるが、著者の説では相続法は財産法であり、家族法とは親族法とその周辺のみを指すため、本書の範囲も親族のみである。内容は有力説が多いが,極め細やかな解釈であり評価高い。親族法の体系書としては本書以外の選択肢は考えられないだろう。

我妻栄『親族法』有斐閣(1961年10月)……法律学全集。重厚だが古い。


【相続法】
潮見佳男『相続法』弘文堂(2014年3月・第5版)……「プラクティス」のようにケースを多用。最終意思尊重よりも法定相続制度を重視する立場をとり、プッシュは弱いが独自説が散見される。

床谷文雄・犬伏由子編『現代相続法』有斐閣(2010年10月)……実務に即したオーソドックスな相続法の教科書。相続関係紛争処理関係手続について章立てしているのが目新しい。家事事件手続法には未対応。

  • 最終更新:2015-09-29 00:36:39

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