新・司法試験基本書まとめwiki―民法(債権総論)

民法(債権総論)
このページで紹介される基本書の多くは、民法全範囲をカバーすることが予定されているものの、未だ他の分野は執筆段階にとどまるものである。

【基本書】
〔メジャー〕
中田裕康『債権総論』岩波書店(2013年8月・第3版)……著者は実務家、一橋教授を経て、現在は東大教授。京大系学説(潮見など)や比較法(類書中もっとも詳しい)にも目配りが利いている最新の体系書。かゆいところに手が届く、丁寧かつ分かりやすい記述は、学生はもとより学者からも圧倒的に評判がよい。まさに債権総論の基本書の決定版。判例通説をしっかり解説したうえで学説の整理を行い、その上で自説を展開するため、押さえるべきポイントが明確になっている。ただし、学説の紹介が詳しすぎるきらいがある(もっとも、整理が隅々まで行き届いているため、学説の紹介を読み飛ばして判例通説の部分だけを読むことも容易である)。3版では巻末にて「中間試案」に対応(14頁)。

潮見佳男『プラクティス債権総論』信山社(2012年4月・第4版)……債権総論分野の基本書としては、最高水準の一冊。内容としては下の二分冊を要約した部分も多いが、二分冊と違い、判例通説+有力説1個程度の説明に留めるなど、教科書としての役割が意識されている。中田『債権総論』との違いとして、ケースが多用されていること(ケースの解答はないものの、ケースを踏まえて原理原則・判例の解説がなされている)、要件事実を意識した構成になっていること、判例のとる論理をナンバリングを用いて丁寧に整理していることなどが挙げられる。もっとも、中田が伝統的通説に近い立場から、引用文献を明示したうえで近時の有力説を整理しているのに対し、本書は引用文献なしで、有力説の立場を前提に説明を進めている部分がある。また、あまり明示的ではないが言葉の端々に著者の考えが反映されている(「…と考えられている」など)。

松井宏興『債権総論』成文堂(2013年10月)……担保物権の基本書が人気を博している著者によるコンパクトな基本書。判例通説に沿って、債権総論を平易に解説する。上記、中田や潮見と比べると論点の記述に鋭さはなく、内容も十分に整理されていないなど、完成度は著しく見劣りするものの、コンパクトであるという一点に於いてなお存在価値があるだろう。担保物権ほどではないが支持を得ているようである。

〔その他〕
平井宜雄『債権総論(法律学講座双書)』弘文堂(1994年1月・第2版)……通説に対するアンチテーゼとして一時代を画した。立法者意思や制度趣旨から演繹的かつ丁寧に解釈していくスタイルに定評がある。現在は平井説の批判をふまえた新しい世代の学説が主流となりつつあり、その意味では本書はその役割を終えたというべきだろう。試験対策としては有用とはいいがたいが、相当因果関係説批判は、理解のために一読の価値はあるかもしれない。判例・通説を十分に理解した上で取り組むべき本。

前田達明『口述債権総論』成文堂(1993年4月・第3版)……著者の京大での講義を録音したテープをもとに書かれている。執筆段階でかなり手が加えられているため、臨場感はそれほどでもないが、平易な口語を用いた説明は非常に丁寧で分かりやすい。判例その他の具体例を豊富に挙げるが、いわゆるケースメソッドとは異なる、オーソドックスなスタイルである。歴史的沿革の説明が詳しい(一般的な概説書の水準を遥かに超えている)点に特徴がある。伝統的な債権法理論を箇条書きではなく、説明するお手本。著者の体系がそれほど前面に出ていないため、読み手の学習段階を問わないとっつきやすさがある。

淡路剛久『債権総論』有斐閣(2002年12月)……法教連載の単行本化。とはいえ中身は正統派の体系書。奥田ら伝統的通説、平井説の後世代かつ内田・潮見・中田らの前世代という位置づけ。したがって過渡期の理論が多い。

潮見佳男『債権総論1・2(法律学の森)』信山社(1 債権関係・契約規範・履行障害:2003年8月・第2版,2 債権保全・回収・保証・帰属変更:2005年3月・第3版)……法律学の森シリーズ(通称「森」)、2分冊。「学部における債権総論を対象とした準教科書(学習書)としての役割を切り捨てて理論ベースでの叙述に徹し」(はしがき)、債権者利益(契約利益)中心の体系という観点から債権総論(及び契約法総論)を再構築した理論と実務を架橋する意欲的な体系書。債権法改正の理念を支える理論的支柱といっても過言ではなく、新版注釈民法の潮見執筆部分(10巻1、10巻2)とあわせて債権法改正に関する必読文献の一つである。したがって、受験生にとってはきわめて難解であり、また、「潮見語」と呼ばれる潮見独特の用語法に起因する読みづらさとも相まって、学生からは「森」ならぬ「樹海」であると皮肉られている。

奥田昌道『債権総論』悠々社(1992年7月・増補版)……元京大教授・最高裁判事。伝統的通説。各種文献で引用される回数が圧倒的に多く、我妻民法講義以降の債権総論の代表的基本書。判例・学説解説共に徹底的。

池田真朗『新標準講義民法債権総論』慶應義塾大学出版会(2013年3月・第2版)……コンパクト。判例・通説に徹底した解説。パンデクテン体系を崩さず民法典の体系に沿って進めているため最近のパンデクテン体系を崩した本が合わない場合の選択肢。あくまで初級者~中級者向けなので情報量は少ない。

平野裕之『プラクティスシリーズ債権総論』信山社(2005年3月)……学説が上手く整理されている。

内田勝一『債権総論』弘文堂(2000年10月)……損害賠償で自説。図がないのが難。

渡辺達徳・野澤正充『債権総論(弘文堂NOMIKAシリーズ3)』弘文堂(2007年11月)……無難な出来。

野澤正充『債権総論 セカンドステージ債権法II(法セミLAW CLASSシリーズ)』日本評論社(2009年10月)……法学セミナー誌上での連載を書籍化したもの。判例・通説中心。自説僅少。

円谷峻『債権総論―判例を通じて学ぶ』成文堂(2010年9月・第2版)……タイトルの通りで、かつ判例が長めに引用。

高橋眞『入門債権総論』成文堂(2013年4月)……評価待ち。

小野秀誠『債権総論(法律学の森)』信山社(2013年10月)……著者は一橋大教授。パンデクテン体系に沿った構成で、図式を多用。通説的見解を最新の学説や比較法的見地(とりわけ詳しい)を取り入れて微修正するといった趣きであり、先行する潮見や中田より穏当な学説をとる。学説は代表的な見解の紹介にとどめており、債権法改正についてはあえて触れていない(ただし、その背景にある思想を学ぶことは可能である)。従来の基本書と比較して、一風変わった判例や事案を紹介していると感じる箇所がいくつかあり、著者の視野の広さが伺われる。法律学の森の水準を保ちながらも、受験生にとっても読みやすい。中田の情報量に圧倒された人におすすめ。

遠藤研一郎『民法3(債権総論)』中央大学出版部(2009年3月)……債権総論に関する基本的事項について項目を立てて分かりやすく紹介している。本書は中大通信教育部での講義テキストであり、初学者向けの教科書という趣に徹しているため、主に判例・通説に従って記述されている。但し一般向けには販売していないため、欲しい人は中大生協で直接購入するか、Amazonなどで中古品を手に入れるしかない。


【債権法改正関連書】
大村敦志『民法改正を考える』岩波新書(2011年10月)……東京大学における「民法改正-留学生のため民法案内(2)」の講義ノートをまとめたもの。債権法改正にとどまらず、家族法改正等を含めて、「民法を改正することはどういうことか」を論じた著書。

内田貴『民法改正―契約のルールが百年ぶりに変わる』ちくま新書(2011年10月)……債権法改正論者が、債権法改正を正当化づける立法事実(要するに債権法改正の必要性)を解説した入門書。債権法改正の是非を語る上で欠かせない基本書となるだろう。法学徒必読の書。

内田貴『債権法の新時代-「債権法改正の基本方針」の概要』商事法務(2009年9月)……債権法改正の最重要中心人物による「債権法改正の基本方針」入門書。必読文献。

民法(債権法)改正検討委員会編『債権法改正の基本方針(別冊NBL No.126)』商事法務(2009年4月)……債権法改正の基本方針本文。後記「詳解」を買うなら本書は不用。

民法(債権法)改正検討委員会編『シンポジウム「債権法改正の基本方針」(別冊NBL No.127)』商事法務(2009年8月)……債権法改正の基本方針についてのシンポジウムの講義録とレジュメ集。委員会の委員が基本方針について解説したもの。

民法(債権法)改正検討委員会編『詳解・債権法改正の基本方針I-V』商事法務(2009年9月-2010年6月)……債権法改正の基本方針の全文+注釈。委員会の委員による公式注釈書。現行法の問題点を網羅しており、さながら債権法についての最高水準の体系書である。

民事法研究会編集部編『民法(債権関係)の改正に関する検討事項-法制審議会民法(債権関係)部会資料〈詳細版〉』民事法研究会(2011年1月)……法制審議会民法(債権関係)部会の各会議で提出された「民法(債権関係)の改正に関する検討事項 詳細版(1)~(15)」を1冊にまとめた資料集。本書の内容は法務省HPで無料公開されているが膨大な量なので重宝する。

「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理(NBL953号別冊付録)」(2011年5月)……法制審による債権法改正関連資料。法務省HPでダウンロード可能。

商事法務編『民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理の補足説明』商事法務(2011年6月)……法制審による債権法改正関連資料。上記「論点整理」に簡潔な解説を加えたもの。したがって、本書を購入すれば上記「論点整理」は不要。法務省HPでダウンロード可能。

「民法(債権関係)の改正に関する中間試案(NBL997号)」(2013年3月)……法制審による債権法改正資料。法務省HPでダウンロード可能。

商事法務編『民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明』商事法務(2013年5月)……法制審による債権法改正資料。法務省HPでダウンロード可能。

内田貴『民法改正のいま―中間試案ガイド』商事法務(2013年6月)……上記中間試案を平易に解説した著書。

「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案(NBL1034号)」(2014年9月)……法制審による債権法改正資料。法務省HPでもダウンロード可能。

潮見佳男『民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案の概要』きんざい(2014年12月)……法制審幹事による要綱仮案の私的解説。ただし、公式解説は公表されないようなので本書は必読。

☆「民法(債権関係)の改正に関する要綱(NBL1045号)」(2015年3月)……法制審による債権法改正資料。法務省HPでもダウンロード可能。

  • 最終更新:2015-09-29 00:31:46

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