新・司法試験基本書まとめwiki―民法(債権各論)

民法(債権各論)
このページで紹介される基本書の多くは、民法全範囲をカバーすることが予定されているものの、未だ他の分野は執筆段階にとどまるものである。

【債権各論】
潮見佳男『基本講義債権各論I・II(ライブラリ法学基本講義)』新世社(I 契約法・事務管理・不当利得: 2009年12月・第2版,II 不法行為法: 2009年10月・第2版)……学生向け。ですます調。カバーの色より「潮見イエロー」や「潮見黄色本」との愛称で学生から親しまれている。分量が手ごろなので、ロースクール生の間でのシェアはかなりのもの。IIは必要にして十分な内容。Iは旧版時にはさすがに薄いとの声もあったが、第2版では30ページほど加筆されている。 とはいえ、やはりこれだけでは上位を狙う受験生にとっては情報量が物足りないようで、契約法は山本、不法行為法は窪田といった本格的な基本書を辞書的に併用することで補完する者が多いようである。

水辺芳郎『債権各論』三省堂(2006年4月・第2版)……コンパクト。文章に難ありという声も。

笠井修・片山直也『債権各論I―契約・事務管理・不当利得(弘文堂NOMIKAシリーズ4-1)』弘文堂(2008年12月)……無難な出来という評価。通説にはその旨明記、有力説は論者名を挙げて解説。判例は比較的長めに引用されているし、理解に資する図表もそこそこある。ただし、要件事実には配慮されていない。NOMIKAの債権各論は、Iが契約・事務管理・不当利得、IIが不法行為という、潮見イエローと同じ分冊である。よって、潮見イエロー(の少なくともどちらか)が肌に合わないと思った場合、乗り換え相手の候補として挙げやすい。

池田真朗『新標準講義 民法債権各論』慶應義塾大学出版会(2010年3月)……コンパクト。学部生、未修者向け。

山﨑●敏彦(●は崎の大が立)『債権法各論講義 要件事実論的アプローチ』成文堂(2013年4月)……教科書+判例集+要件事実本でおまけにコアカリキュラム対応という夢のような教科書。巻末にてコアカリキュラム本文と本書の対応関係を明記している。


【契約法】
山本敬三『民法講義IV-1 契約』有斐閣(2005年11月)……辞書向き。著者講義のレジュメを元に、各論点の通説・有力説・判例がレジュメ調に網羅され、しかも各説ごとの要件事実ブロック・ダイアグラムも載っている。

来栖三郎『契約法』有斐閣(1974年9月)……古典的名著。契約総論はない。

水本浩『契約法』有斐閣(1995年3月)……我妻弟子による体系書。来栖契約法のように大著になりがちな契約法理論を我妻説を中心にまとめあげたもの。名著

平井宜雄『債権各論I上 契約総論(法律学講座双書)』弘文堂(2008年8月)……はしがきからして熱い、平井ファン待望の一冊。強い実学志向から、現代的な契約を巡る法現象を直視し、事業者間契約を叙述の中心に据えている。そのため、受験生の類はすっかりおいてけぼりとなってしまった。ただし、実務家にとっては非常に示唆的で有用な一冊であるため、合格後に思う存分楽しむとよい。

潮見佳男『契約各論I―総論・財産権移転型契約・信用供与型契約(法律学の森)』信山社(2002年1月)……理論の洗練度はかなりのもの。但し,体系書&潮見語。なお契約総論は『債権総論I(法律学の森)』にて論じられている。

平野裕之『民法総合5 契約法』信山社(2007年2月)……判例集も合わせているため、読むのに苦労する。

後藤巻則『契約法講義』弘文堂(2013年3月・第3版)……学部およびロースクールの授業用の教科書。設問も付いている。導入用の教科書としてはちょうどいい分量・難易度になっているが、メインの基本書としては薄すぎる。

半田吉信『契約法講義』信山社(2005年4月・第2版)……最新の学説や消費者契約などにも目配りが利いている。

三宅正男『契約法 総論・各論(上)(下)』青林書院(1978年2月,1983年3月,1988年10月)……雇用はない。

野澤正充『契約法 セカンドステージ債権法I(法セミLAW CLASS シリーズ)』日本評論社(2009年1月)……法学セミナーの連載をまとめたもの。判例・通説中心。自説僅少。


【不法行為】
窪田充見『不法行為法』有斐閣(2007年4月)……設例方式。不法行為の基本書としては定番となりつつある。内容は高度で読みこなすにはそれなりに実力が必要である。潮見イエローを補完する用途でもよく利用される。

吉村良一『不法行為法』有斐閣(2010年2月・第4版)……関西系(故意・過失/違法性の二元論)。読みやすい。また、本書の立場も比較的堅実なものが多いように思われる。ただし判例は結論のみの引用が多い。4版では要件事実の記述が追加されたが、簡単な説明にとどまっている。

加藤一郎『不法行為』有斐閣(1974年10月・増補版)……いわゆる伝統的通説。古典的名著。

平井宜雄『債権各論II 不法行為(法律学講座双書)』弘文堂(1992年4月)…… I上のはしがきによれば、現在改訂中とのことであったが、著者逝去により叶わなくなった。独自の体系により『債権総論』と同じく民法学界に多大な影響を与えた(『損害賠償法の理論』を併読すると平井説に対する理解が進みやすい。)。平井説がすべて受け入れられたわけではないが、学者、実務家いずれの側においても、その影響を受けていない者はいない。名著であるが、抽象的かつ難解なので、初学者はまず平井説をふまえた新しい世代の基本書を読むべきだろう。上智ローでは不動の教科書。

潮見佳男『不法行為法(法律学の森)』信山社(1999年5月,2版は3分冊の予定で現在『不法行為法I』(2009年9月)、『II』(2011年2月)が刊行済み。効果論が未刊)……判例・学説を詳細に整理し、かつ自らの体系も明らかにした現時点で本邦最高峰の体系書(とくに第2版)。受験生が読む本ではない。

平野裕之『民法総合6 不法行為法』信山社(2013年7月・第3版)……契約法と同じく、判例集込みで分厚い本。

【現】前田陽一『債権各論II 不法行為法(弘文堂NOMIKAシリーズ4-2)』弘文堂(2010年3月・第2版)……読みやすいが、薄い。ただし、これで必要十分という声も。

藤岡康宏『民法講義V 不法行為法』信山社(2013年3月)……不法行為法の大家による体系書。不法行為法を「権利の保護」と「あらたな利益の法実現」を目的とする「権利の法実現の法」としてとらえる。中心的な読者としては法学部の学生を対象としている(はしがき)とされるが、筆者独自の「法的判断の三層構造論」が随所に出てくるなど手強い体系書である。また情報の網羅性に欠けている(とくに効果論)。


【事務管理・不当利得・不法行為】
加藤雅信『新民法大系V 事務管理・不当利得・不法行為』有斐閣(2005年9月)……最高裁をも動かした加藤理論。いま事務管理・不当利得を真面目に学習しようとするならば第一に読まれるべき本。論旨が明快。特に不当利得についてはこの本の右に出るものは無いといっていい。

加藤雅信『クリスタライズド民法 事務管理・不当利得』三省堂(1999年9月)……275頁と薄いが箱庭理論の粋が詰まった名著。新民法大系と記述が重複する箇所もあり既に絶版なため、無理して手に入れる必要はないが、個々の論点が新民法のものよりかなり絞られているため内容はかなり濃い。古書店などで見かけた時は是非買うべきである。

藤原正則『不当利得法(法律学の森)』信山社(2002年2月、☆改訂予定あり。)……不当利得類型論(給付利得、侵害利得、支出利得、対第三者関係)。ドイツ法の解釈論に依拠するところが大きいが難解。

澤井裕『テキストブック事務管理・不当利得・不法行為』有斐閣(2001年4月・第3版)……違法性と故意・過失を区別する二元説の立場。不法行為部分が詳しい。各節の冒頭に設例が、本論の後に解説が付いている。参考書に最適。入手方法がオンデマンド版(定価 9,400円・税別)となっているのが残念。

円谷峻『不法行為法・事務管理・不当利得―判例による法形成』成文堂(2010年3月・第2版)……判例の引用が詳しい。

吉田邦彦『不法行為等講義録』信山社(2008年12月)……平井弟子による不法行為等(法定債権)の講義録。独習に耐えるレジュメといった趣。

石崎泰雄・渡辺達徳編『新民法講義5 事務管理・不当利得・不法行為法』成文堂(2011年3月)……若手研究者(執筆者の多くが准教授)による法定債権の教科書。比較的新しい情報を平易に解説している。設例と図解が豊富であるのが本書の特徴。

野澤正充『事務管理・不当利得・不法行為 セカンドステージ債権法III(法セミLAW CLASSシリーズ)』日本評論社(2011年8月)……法学セミナーの連載をまとめたもの。判例・通説中心。自説僅少。

橋本佳幸・大久保邦彦・小池泰『民法V 事務管理・不当利得・不法行為(LEGAL QUEST)』有斐閣(2011年11月)……質量ともに司法試験対策として十分な内容を持つ。その反面、高度な議論を圧縮したような個所もあるので、全くの初学者は、例えば潮見イエローなどの後に読めばより効果が上がるだろう。

  • 最終更新:2015-09-29 00:34:01

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