新・司法試験基本書まとめwiki―実務科目

実務系科目
以下の書籍は,司法修習生(あるいは実務家)になってから読めば足りる書籍がほとんどである。受験生のうちから背伸びをして(あえて受験勉強の時間を割いて)読むべき本は少ないということを念頭に置いて,書評を閲読されたい。

【民事実務】
〔要件事実〕
司法研修所編『新問題研究要件事実』法曹会(2011年9月)……通称「問研」。「類型別」の導入に作成された,司研公式入門書。まずはここから。なお予備試験の要件事実問対策としては,サンプル問題・第1回とも民法・民訴以外に本書程度の知識があれば十分解答可能である。新版になり13問となり、貸借型契約において返還時期(弁済期)の合意を契約の成立要件としない立場に改説している。

司法研修所編『紛争類型別の要件事実』法曹会(2006年9月・改訂)……通称「類型別」。もともとは「1巻,2巻」の導入のために作成された,民裁教官室が修習生に要求する水準を示す,要件事実のスタンダードテキストであった。ところが現在,そもそも「1巻,2巻」が読まれなくなり,そのうえ教科書としても大島・民事裁判実務の基礎のような優れた書籍が現れた今となっては,本書の利用価値は大きく減殺されていると言わざるを得ない。内容としても具体的な書き方を示しているわけでもなく初心者向けではないし、かといって中級者であれば大島などの他の書籍を使うべきであろう。おまけに賃借型契約が旧説のままであるのでいよいよ使い勝手は悪い。

大島眞一『完全講義 民事裁判実務の基礎 上・下』民事法研究会(2013年5月・第2版)……元神戸ロー派遣裁判官による要件事実,事実認定の教科書の改訂版。従来は一冊本だったものが,改訂版では演習問題が付いて上下巻の二分冊となった。単なるマニュアル本とは一線を画した思考過程を丁寧に追う記述が分かりやすく,情報量も充分。読み手に行間を読ませない教科書としての配慮が行き届いており,類型別より格段に頭に入りやすく,なおかつ残りやすい。本番までに是非とも読んでおきたい一冊。なお、本文の内容はあくまでも司法研修所の見解に忠実であるが、コラムではちょくちょく反対説を唱えているのも面白い。

司法研修所編『増補民事訴訟における要件事実 第1巻』法曹会(1986年10月),『民事訴訟における要件事実 第2巻』法曹会(1992年3月)……通称「1巻,2巻」。1巻は要件事実の総論の他,代理,条件,相殺,売買関係の要件事実を,2巻は賃貸借関係の要件事実をそれぞれ逐条解説している。昔は修習生必読と言われたが,現在となっては内容も古くなり,司法研修所が改説している箇所もあるため,修習生の中でも本書にまで目を通している人間は稀である。言うまでもなく,司法試験受験生が本書を読む必要はない。

加藤新太郎・細野敦『要件事実の考え方と実務』民事法研究会(2014年11月・第3版)……司法書士向けの連載をロー生用に加筆したもの。問研と類型別の次は本書。

伊藤滋夫『要件事実の基礎―裁判官による法的判断の構造』有斐閣(2000年12月),『要件事実・事実認定入門―裁判官の判断の仕方を考える』有斐閣(2005年4月・補訂版)……著者は元裁判官で要件事実の第一人者。ミスター司研説。『要件事実の基礎』は後記『事実認定の基礎』と対をなし民事判決における事実判断の構造(事実認定の基礎)と法的判断の構造(要件事実の基礎)を論じた古典的名著であり修習生はたいてい持っているが、要件事実論総論的な記述にとどまるので本書のみで要件事実論を習得するというわけにはいかない。なお「裁判規範としての民法」説に対しては痛烈な批判がある。

伊藤滋夫・山崎敏彦編著『ケースブック要件事実・事実認定』有斐閣(2005年12月・第2版)……主張整理に加えて事実の摘示・評価を問う演習書。司法試験の民法の論文問題と整合性が極めて高いとの意見もある。もちろん独習もできるが、解説なし・ヒントのみ掲載の練習問題も豊富にあるので、勉強会を組むのも良い。

大江忠著(法教育支援センター編)『要件事実ノート』商事法務(2007年7月)……類型別に完全準拠したQ&A本。いわば教科書ガイド。独習用に。

大江忠著(法教育支援センター編)『要件事実ノート2 重要判例と要件事実論』商事法務(2010年1月)……類型別に出てくる基本的判例を解説した本。

伊藤滋夫編著『要件事実講義』商事法務(2008年2月)……創価ローの要件事実教育の内容の研究発表といった趣き(要件事実講義の実況中継そのものではない)。問研(ただし旧版)と類型別のQ&A集が載っている。

伊藤滋夫編著『要件事実小辞典』青林書院(2011年12月)……要件事実(ただし民事法の要件事実のみ)の用語について平易に解説した小辞典。いわゆる司研説の立場に立つ。要件事実特有のテクニカルタームを理解するために。

大江忠『ゼミナール要件事実』『同2』第一法規(2003年6月,2004年10月)……「言い分形式」による要件事実問題集。1は典型的紛争類型、2は司法試験の民法、民訴法問題からの出題。平成19年5月の増刷ではかなり手を加えられているので刷数には注意すべきである。

大江忠・辻健吾『要件事実判例演習 民法債権総論』『同 民法債権各論』商事法務(2013年5月、2014年3月)……重要判例を素材に攻撃防御の構造、要件事実を解説。

村田渉・山野目章夫編著『要件事実論30講』弘文堂(2012年3月・第3版)……岡マ著者の岡口裁判官いわく「インプット用の演習書」であり,第1部は要件事実論総論,第2部は設例形式の類型別解説,第3部に解答及び簡易解説の付された演習問題17問が収録されており,一冊で自己学習しやすい。第3版は評価待ち。

岡口基一『要件事実問題集』商事法務(2012年3月・第3版)……著者いわく「アウトプット用の演習書」であり,(込み入っているという意味での)難しめの問題が20問収録されている。2回試験対策用に釈明や失当の設問も用意されている一方,最後の方の問題には,2回試験の出題可能性は低いとの注がある。第3版は評価待ち。

大江忠『図解要件事実 民法総則・物権』『同債権』『同親族・相続』第一法規(2007年9月,2007年11月,2007年12月)……民法の条文ごとに要件事実をブロック・ダイアグラムで図解。同著者の要件事実民法の簡略版。辞書。

☆高須順一・木納敏和・大中有信編著『事案分析 要件事実』弘文堂(2015年2月)……評価待ち。

(以下は上級者・実務家向け)
岡口基一『要件事実マニュアル(1)-(5)』ぎょうせい(2013年9月-2014年3月・第4版)……通称「岡マ」。現役裁判官による要件事実の辞書本。ロー生にとっては、(1),(2)巻だけで十分。その他の巻については、行政訴訟や選択科目についてどのような紛争類型が問題となるのかを知るため、目次をコピーすれば十分と思われる。なお、要件事実に関する質問があれば、著者のask.fm(http://ask.fm/okaguchik)にて受け付けているとのことである。

伊藤滋夫総括編集『民事要件事実講座(3)(4)』青林書院(2005年12月、2007年3月)……全6巻のシリーズ中、(3)、(4)巻は民法(財産法)の要件事実を解説している。辞書。

新堂幸司監修・高橋宏志・加藤新太郎編『実務民事訴訟法講座(第3期)第5巻・証明責任・要件事実論』日本評論社(2012年12月)……不動産関係訴訟、動産関係訴訟、不動産登記訴訟、売買、貸借契約関係訴訟、債務不履行関係訴訟、不法行為訴訟、安全配慮義務違反関係訴訟、医療過誤訴訟、国家賠償関係訴訟、執行関係訴訟の証明責任・要件事実について解説。ただし、冒頭の「民事訴訟の現在と展望」と題する鼎談においては、過度の要件事実思考に苦言を呈する内容となっているのは興味深い。

倉田卓次監修『要件事実の証明責任・債権総論』『同・契約法上下』西神田編集室(1986年7月,1993年12月,1998年7月)……要件事実本のさきがけといえる古典的名著。司研説の立場にとらわれることなく、著名裁判官や民事法学者が自らの要件事実論を開陳し議論をたたかわせている。上級者向け。

並木茂『要件事実原論』悠々社(2003年3月)、『要件事実論概説1 総論』『同2 時効・物権法・債権法総論他』『同 契約法』信山社(2014年12月、2010年3月、2009年4月)……(元)裁判官が司研説とは全く異なる独自の立場から要件事実を再構成したもの。『原論』でその体系を平易に解説。『概説1』はより本格的に要件事実総論を、『同 契約法』は契約法(民法総則含む)の要件事実を解説。『同2』は時効・物権法・債権法総論・法定債権の要件事実を解説。上級者向けの辞書。

定塚孝司『主張立証責任論の構造に関する一試論 故定塚孝司判事遺稿論集』判例タイムズ社(1992年3月)……司研説とは異なる立場(I・当事者は、権利を主張するについては、最小必要限度の事実を主張立証すれば足りる。II・ある事実を一方の当事者に主張立証責任ありとした場合、これと反対の事実を他方の当事者に主張立証責任を負わせることは絶対にない。III・事実の不存在について主張立証責任を負わせることはない。の3つの命題)から要件事実を再構成した意欲的な著書。民法の要件事実(総則の一部、保証債務、契約の効力、贈与契約、消費貸借契約、使用貸借契約、請負契約、委任契約、不当利得)の検討も含まれている。上級者向け。


〔民事事実認定〕
司法研修所編『事例で考える民事事実認定』法曹会(2014年4月)……通称ジレカン。司法研修所の白表紙テキストを市販化したもの。貸金返還請求事件を題材に、民事事実認定に関する一般的かつ基本的手法を平易に解説したテキスト。裁判官Jと妙に優秀な修習生A、Bの対話形式なのでわかりやすい。まずはここから。ひそかに処分証書につき「よってされた説」を取っていることに注意。分かり易い上に薄く、非常に読みやすいので予備試験前に詰め込むのにも便利。

土屋文昭・林道晴編『ステップアップ民事事実認定』有斐閣(2010年12月)……ロー生,修習生,駆け出し実務家向けの事実認定入門書。第1部解説編もコンパクトで分かりやすいが,特筆すべきは第2部演習問題編で,解説付きの事実認定演習問題はおそらく類書で初である。ただし完結した記録の体裁ではなく,手続が進むごとに現れるであろう主張や証拠をどう捉えていくかという,読み物のような形式になっている。問題のレベルは研修所の導入起案未満で簡単めであり,動かし難い事実,経験則,ストーリーの合理性といった基本軸を明らかにする解説であり,事実認定手法の具体的イメージが掴みやすい。いわば事実認定版の「問研」だろう。また,下記司法研究「民事訴訟における事実認定」の「副読本的な存在となることも意図している」(はしがき)というように,ちょくちょく引用されており,合わせて読むとなお有用。なお,予備試験対策としてはサンプル問題・第1回とも要件事実問以外に関しては民訴以外に本書程度の知識で十分解答可能である。

田中豊『事実認定の考え方と実務』民事法研究会(2008年3月)……司法研修所教官を歴任した著者が,司法書士向けの雑誌で事実認定のイロハを説いた連載を,法科大学院生や司法修習生のために加筆して単行本化したもの。上掲『ステップアップ』と比べると,本書はより民裁起案や判決起案に特化した内容となっている。実際の判決文をもとに,証拠から間接事実を証明し,経験則によって主要事実を推認していく過程を,きわめて分かりやすく解説している。司法修習生にお薦め。

伊藤滋夫『事実認定の基礎―裁判官による事実判断の構造』有斐閣(2000年6月・第5刷補訂)……民事事実認定に関する古典的文献。「事実認定における判断の構造」の問題を主題とする。

司法研修所編『民事訴訟における事実認定』法曹会(2007年11月)……司法研究報告書が書籍化されたもの。「事実認定に関する判例法理を整理・検討するとともに、裁判実務において培われ、受け継がれてきた様々な事実認定の技法や考え方をできるだけ明確に言語化し、法曹全体の共有財産とすることを目指」した(はしがき)。修習生は大体読む。巻末の高裁裁判官へのインタビュー(14名)が参考になる。

司法研修所編『現代型民事紛争に関する実証的研究-現代型契約紛争(1)消費者紛争』法曹会(2011年4月)……司法研究報告書を書籍化。消費者契約紛争の特徴を踏まえた事実認定、訴訟運営の方法など。

司法研修所編『民事訴訟における事実認定-契約分野別研究(製作及び開発に関する契約)-』法曹会(2014年1月)……司法研究報告書を書籍化。上記民事訴訟における事実認定の各論編。建築工事契約、ソフトウェア開発契約、プラント建設契約といういわゆる開発型契約についての事実認定の問題点を詳解。各業界関係者へのヒアリング資料が付されており参考になる。

伊藤眞・加藤新太郎編『判例から学ぶ民事事実認定』有斐閣(2006年12月)……百選の事実認定ヴァージョン。民事事実認定の基礎理論(総論パート)と民事事実認定の諸相(各論パート・民法総則、物権・担保物権、債権総論、契約、不法行為)という分類で民事事実認定にまつわる判例を解説(全50項目)。新司法試験には不要。

田尾桃二・加藤新太郎編『民事事実認定』判例タイムズ社(1999年4月)……民事裁判官による事実認定にまつわる講演録(6本・田尾桃二、吉岡進、今中道信、後藤勇)と事実認定にまつわる対談・座談会(4本)を収録。歴々の修習生がコピーして収集していた著名な講演録をまとめて単行本化したもの。絶版。

後藤勇『民事裁判における経験則』『続・民事裁判における経験則』判例タイムズ社(1990年11月,2003年4月)……元裁判官。経験則違反として破棄された最高裁判例を素材として経験則を抽出・体系化した著書。経験則の体系化の方法としては一部に批判があるものの有用である。絶版。

加藤新太郎編『民事事実認定と立証活動(全2巻)』判例タイムズ社(2009年10月)……ベテラン裁判官・弁護士が実際の事件(エピソード)を題材に心証形成や訴訟(立証)活動のノウハウについて座談会形式で語った著作。いずれもこれまで実務家が実務経験を通じて習得してきた実践的なノウハウであり、これが書籍化されたことの意義は大きい(はしがきには「暗黙知を形式知に」とある。)。修習生ならば必読。全2巻で分量は多いものの座談会形式なので気軽に読める(ただし、基本的な知識の理解が不十分だと紹介されているエピソードの意味を十分には理解できないため、基本的な書籍を読んだ後に読むことが望ましい)。

☆加藤新太郎『民事事実認定論』弘文堂(2014年6月)……著名な民事裁判官による事実認定にまつわる論文集。民事事実認定にかかわる議論群を事実認定本質論、事実認定対象論、事実認定方法論、事実認定過程論、事実認定基盤論に整理して考察。

☆奥田隆文・難波孝一編『民事事実認定重要判決50選』立花書房(2015年2月)……評価待ち。

〔民訴法実務書〕
(理論と実務)
渡辺弘ほか『民事裁判実務の基礎/刑事裁判実務の基礎』有斐閣(2014年6月)……法教連載を単行本化したもの。裁判官が執筆している。まずはここから。

加藤新太郎編著『民事訴訟実務の基礎』弘文堂(2011年9月・3版)……資料編と解説編の2分冊。具体的な資料を通して民事訴訟手続きを平易に解説。

藤田耕三・小川英明編『不動産訴訟の実務』新日本法規(2010年10月・7訂版)、小川英明編『貸金訴訟の実務』新日本法規(2008年1月・5訂版)……新日本法規の『実務』シリーズ。実務家向けの書籍であり、改訂頻繁。ロー生や司法修習生が買う必要は全くないが、司法修習生は民裁修習中に図書館で参照すると便利。

井上繁規『民事控訴審の判決と審理』第一法規(2013年4月・2版)……現役裁判官による民事控訴審の判決書作成マニュアル。弁護士志望者にとっても上告(受理)理由を発見するための手がかりになるだろう。

瀬木比呂志『民事訴訟実務と制度の焦点』判例タイムズ社(2006年6月)、『民事訴訟実務入門』判例タイムズ社(2010年12月)……ベテラン裁判官による民事訴訟実務の指南書。著者曰く「実務の技術やノウハウ」の体系書。どのように訴訟運営すべきか、どのような文書が説得力があるか、など民事訴訟理論ではなく民事訴訟実務の指南書。このような類書はほとんどないため、任官希望者のみならず弁護士志望者にとっても参考になるだろう。本書『焦点』は、民事訴訟実務パートと民事訴訟制度についての提言パートの2部からなり、前半パートの概説書が上記『入門』であり、後半パートの概説書が後記『法曹制度・法曹倫理入門』である。後記『ケースブック』は上記2冊の実践編といえる。

瀬木比呂志『ケースブック民事訴訟活動・事実認定と判断─心証形成・法的判断の過程とその解説』判例タイムズ社(2010年11月)……同名の判タ連載を書籍化したもの。著者(裁判官)が担当した事例の判決書を中心に設例、解説を付すスタイル。直ちに司法試験・二回試験に役立つものではないが,筆者のこだわりが滾々と語られる等,名物部長に捕まったときの民裁修習を疑似体験できるといっても過言でない。

現代民事法研究会『民事訴訟のスキルとマインド』判例タイムズ社(2010年9月)……実務家と研究者が新民事訴訟法下でのあるべきプラクティスについて研究した論文集。判例タイムズ誌に長期連載(1996-2005年)されたものなので、現在の実務慣行からするといささか内容が陳腐化した論文もないではないが(最新の民訴法実務については上記、瀬木『民事訴訟実務入門』などを参照)、新民訴法の理念(近年本試験においてもたびたび問われている。)を理解するためには今なお有用。修習生が民訴法実務をより深く理解するためにも使えるだろう。

圓道至剛『若手弁護士のための民事裁判実務の留意点』新日本法規(2013年5月)……民事訴訟の第一審・控訴審の手続の流れにそって、訴訟代理人弁護士が「ありがちな失敗」をすることなく訴訟活動をするための「実務上の留意点」を解説(はしがき)。なかなか人には聞けない実務慣行が詳しく載っている。書式例も充実している。修習生、新人弁護士にお勧め。

東京弁護士会春秋会編『実践訴訟戦術-弁護士はみんな悩んでいる』民事法研究会(2014年2月)……若手・中堅・ベテラン弁護士の座談会形式で、法廷マナーから訴訟戦術まで、類書の少ない暗黙知を解説する著書。

林道晴・太田秀哉編『ライブ争点整理』有斐閣(2014年5月)……裁判官・弁護士が争点整理手続の実際を紹介した著書。4事例を題材に準備書面などの書面を掲載し会話形式(各当事者の心証付き)であるため実務をイメージしやすい。

佐伯照道ほか『有利な心証を勝ち取る民事訴訟遂行』清文社(2015年2月)……ベテラン・中堅弁護士による、「訴訟経験の浅い若手弁護士や、その卵である司法修習生、法科大学院生に対し、日本の民事裁判においてどうすれば裁判官の心証を依頼者にとって最大限有利に形成してもらうことができるのかを、できる限り普遍的・客観的視点にて解説し、もって、若手弁護士の訴訟技術の向上を図ることを目的」(はしがき)とした著書。供述の信用性をどう判断するかという民事事実認定の参考書としても使える。

中村直人『訴訟の心得-円滑な訴訟進行のために』中央経済社(2015年2月)……著名なビジネス弁護士が、企業の代理人を担当する弁護士を想定に訴訟の心得を説いた本。

土屋文昭『民事裁判過程論』有斐閣(2015年2月)……元民事裁判官による著書。京大ローにおける「民事裁判過程論講義」草稿を大幅に増補改訂したもの。「民事裁判の裁判過程について、裁判官の内的な視点から、その動態を分析解明しようとするもの」(はしがき)であり、このことは本書の洋題(Nature of the Judicial Process in Japan : inside view of a civil judge)に明らかである。内容は、裁判官の役割論から民事裁判過程解説、民事判断の構造論、事実認定論、判例の位置づけ、裁判官の法的判断形成過程論と多岐にわたる。「すぐれた先達のことば」(はしがき)を多数引用していることも本書の特徴である。(民事)裁判官志望者必読である。

☆小山弘『設例と設問で学ぶ 民事訴訟実務』日本加除出版(2015年4月予定)……

(書式)
裁判所書記官研修所監修『書記官事務を中心とした和解条項に関する実証的研究』法曹会(2010年2月・補訂版)……実務家必携の和解条項例集。法曹会のHPには在庫表示がないが同会から直販できるので電話すべし。

田中豊『和解交渉と条項作成の実務―問題の考え方と実務対応の心構え・技術・留意点』学陽書房(2014年12月)……和解条項作成の注意点のみならず和解交渉の手法(裁判官、当事者代理人双方)についても論じられている。

星野雅紀編『和解・調停モデル文例集』新日本法規(2011年2月・改訂増補3版)……和解・調停条項例集。

新保義隆・栗原由紀子『訴訟上の和解モデル文例100』三協法規(2012年2月・改訂版)……和解条項例集。

法曹会編『民事判決書集』法曹会(1981年11月)……民事判決書の記載例集。


神崎満治郎『判決による登記の実務と理論』テイハン(2001年4月・改訂)……不動産登記関連の主文例掲載。

青山正明編著『民事訴訟と不動産登記一問一答』テイハン(2008年12月・新訂)……不動産登記関連の主文例掲載。新不動産登記法に対応。

【刑事実務】
〔刑訴法実務書〕
石丸俊彦・仙波厚ほか『刑事訴訟の実務上下』新日本法規(2011年3月・3訂版)……普通に基本書として使われることもある。

新関雅夫・佐々木史朗ほか『増補令状基本問題上下』判例時報社(2002年9月、原著1996年6月,1997年2月)……捜査法の実務的な論点について一行問題・簡単な事例問題の形式で実務家が解説。一粒社倒産のため判例時報社が引き継いだ。ほぼここにしか書かれていない論点が出題されたこともある(平成23年度刑訴の準現行犯逮捕)。

高麗邦彦・芦澤政治編『令状に関する理論と実務I,II(別冊判例タイムズ34,35号)』判例タイムズ社(2012年8月,2013年1月)……令状関連実務について実務家が解説。全2冊。I・・総論、逮捕・勾留。II・・保釈・鑑定留置等・勾引・捜索・差押え・検証等・準抗告・抗告。上記令状基本問題の実質的な後継本。修習生必読。

石井一正『刑事実務証拠法』判例タイムズ社(2011年11月・5版)……元裁判官。証拠法分野では他の追随を許さない。実務家必携。

大阪刑事実務研究会『刑事公判の諸問題』判例タイムズ社(1989年8月)、『刑事実務上の諸問題』(1993年12月)、『刑事証拠法の諸問題上下』(2001年4月)……関西の刑事裁判官による論文集。

司法研修所検察教官室編『検察講義案』法曹会(2013年4月・平成24年版)……司研テキスト(白表紙)。隠れた名著。予備試験の刑事実務や口述対策に役立つとの声もある。

法曹会編『刑事裁判書集上下』法曹会(1984年3月,1985年5月)……刑事裁判書事例集

小林充『刑事控訴審の手続及び判決書の実際』法曹会(2000年6月)……元裁判官による控訴審判決書作成マニュアル書。控訴審弁護人にとっても有用。

石井一正『刑事控訴審の理論と実務』判例タイムズ社(2010年5月)……元裁判官による刑事控訴審実務書。

門野博『裁判員裁判への架け橋-刑事裁判ノート』判例タイムズ社(2012年10月)……元裁判官が自身が担当した高裁刑事事件について解説したケースブック(裁判例も収録)。判例タイムズ連載に、布川事件、少年事件編を追補して単行本化したもの。裁判官志望者は必読。

虎井寧夫『令状審査・事実認定・量刑-刑事裁判官の思索と実践』日本評論社(2013年9月)……元刑事裁判官が簡裁裁判官の研修用にまとめた令状審査、事実認定、量刑に関するQ&A集。とくに令状審査に関する文献はあまりないだけに貴重。任官希望者はもちろん刑事弁護人志望者にも役立つだろう。

佐藤嘉彦『刑事裁判覚書-裁かば裁かれん 念ずれば花ひらく』成文堂(2014年3月)……同志社ロー教授(元裁判官)による刑事論文集。第1章・事実認定論、第2章・量刑論が読みどころ。古今東西の文献を参照しつつ自らの裁判経験に基づく事実認定論、刑の量定論を展開しており参考になるし、読み物としておもしろい。

三好一幸『略式手続の理論と手続』『簡易裁判所における刑事公判の理論と実務』☆『令状審査の理論と実務』司法協会(2012年9月、2013年9月、2014年4月)……簡裁判事による刑事手続マニュアル本。


〔刑事事実認定〕
石井一正『刑事事実認定入門』判例タイムズ社(2010年8月・第2版)……(元)刑事裁判官による刑事事実認定テキスト。

木谷明編著『刑事事実認定の基本問題』成文堂(2010年5月・第2版)……木谷古希記念。刑事事実認定の基本テーマ15題を解説。

小林充・香城敏麿編『刑事事実認定上下』判例タイムズ社(1992年9月,1992年11月)

小林充・植村立郎編『刑事事実認定重要判決50選上下』立花書房(☆2013年10月・第2版)……判例タイムズ社の方が改訂されないまま古くなったので、現在はこちらが代表格。重要論点に関する重要判例を多数収録しており、そこにおける判例の準則や、あてはめの指針を見極める上で非常に有益。新司法試験対策にも直結するので、当然、ロースクール生も読むべきである。第2版では8項目追加、対象判例の変更・執筆者変更15項目(全63項目)。

大阪刑事実務研究会「事実認定の実証的研究(1)-(13)」(判例タイムズ227-322号)……刑事事実認定に関する古典的文献。

司法研修所編『自白の信用性』『情況証拠の観点から見た事実認定』『共犯者の供述の信用性』『犯人識別供述の信用性』法曹会(1991年7月,1994年5月,1996年7月,1999年6月)……刑事事実認定に関する司法研究報告書4部作。なお『自白の信用性』については、再審無罪が確定した布川事件(自白の信用性を否定)を自白の信用性を判断する一事例として掲げているという難点(http://www.hosokai.or.jp/item/annai/etc/book_use.html)がある。

最高裁判所事務総局刑事局監修『自白の任意性・信用性に関する刑事裁判例集』司法協会(1997年9月)……絶版。

守屋克彦『自白の分析と評価─自白調書の信用性の研究』勁草書房(1988年12月、OD版2005年4月)……(元)刑事裁判官による著作。

渡部保夫『無罪の発見─証拠の分析と判断基準─』勁草書房(1992年3月)……(元)刑事裁判官による著作。同著者による一般人向けの著書として『刑事裁判を見る眼』岩波現代文庫(2002年8月)、『刑事裁判ものがたり』日本評論社(2014年6月)。

木谷明『刑事裁判の心』『事実認定の適正化』『刑事事実認定の理想と現実』『刑事裁判のいのち』法律文化社(2004年8月・新版,2005年7月,2009年8月,2013年8月)……元刑事裁判官による著作。調査官時代の論文、講演録、小論等からなる。いずれも冤罪防止という観点から論じられており、刑事裁判に関わる者ならば必読。

植村立郎『実践的刑事事実認定と情況証拠』立花書房(2011年12月・第2版)……刑事裁判官による著作。刑事事実認定にも要件事実的思考が有用であるとする論文と、情況証拠に関する論文からなる。改訂頻繁。なお、刑事裁判官志望者は、同著者による「実務現代刑事法(その3)・刑事の裁判に関するワンポイントアドヴァイス集」(判タ1345号74頁)を読むべし。

原田國男『逆転無罪の事実認定』勁草書房(2012年7月)……量刑法の第一人者である元刑事裁判官が、自身が担当した控訴審で逆転無罪となった16件の判決文とその解説をまとめた書。


〔刑事弁護〕
大木孝『和光だより-刑事弁護教官奮闘記』現代人文社(2010年10月)……刑事弁護教官が横浜弁護士会のメーリングリストに寄稿した「和光だより」を書籍化したもの。だが司法研修所の刑事弁護科目に関する解説内容が充実しておりとても参考になる。ぜひとも修習前に読むべし。

佐藤博史『刑事弁護の技術と倫理─刑事弁護の心・技・体』有斐閣(2007年5月)……藤木英雄の元助手である弁護士による著書。刑事弁護のスピリットを伝える。

『刑事弁護ビギナーズ』現代人文社(2014年9月・Ver.2)……季刊刑事弁護増刊。まずはここから。

大出良知・高田昭正・神山啓志・坂根真也編『新版 刑事弁護』現代人文社(2009年10月)

三木祥史『Q&A類型別刑事弁護の実務』新日本法規(2010年3月・改訂)……元刑事弁護教官による著書。

東京弁護士会刑事弁護委員会編『実践刑事弁護当番弁護士編』現代人文社(2010年6月・新版補訂版)、同『国選弁護編』現代人文社(2011年12月・新版2版)……東京における刑事実務の運用につき詳しく載っている。


東京弁護士会法友全期会刑事弁護研究会編『刑事弁護マニュアル』ぎょうせい(2012年3月・全訂)

山内久光『Q&A刑事弁護の理論と実践-実務における基本的思想』日本加除出版(2012年10月)……元刑事弁護教官である弁護士が公判前整理手続・裁判員裁判時代における刑事弁護の標準を明らかにした著書。刑事弁護人ならば必読。

宮村啓太『事例に学ぶ刑事弁護入門-弁護方針完結の思考と実務』民事法研究会(2012年10月)

荒木和男ほか編著『はじめての刑事弁護Q&A実務書式58』青林書院(2013年5月)……東弁刑事弁護委員会の有志によるQ&A+書式集。

日本弁護士連合会編『法廷弁護技術』日本評論社(2009年3月・第2版)……裁判員制度をふまえた日弁連公式の弁護技術テキスト。修習生以上なら必携。しかし著者はおおむね修習所教官と世界観を異にしている。

日本弁護士連合会編『裁判員裁判における弁護活動─思想と戦略』日本評論社(2009年1月)……上記「法廷弁護技術」の続編。自由と正義連載の単行本化。公判前整理手続についての解説は特に詳しく、「証拠開示の最前線」と題する章は司法試験受験生にも役立つだろう。修習生以上必携。

丹治初彦・編、丸田隆・春日勉・斎藤司・著『保釈-理論と実務』法律文化社(2013年7月)……保釈実務に関する記載が詳しい。罪名ごとの保釈金額調査表が載っている。

櫻井光政『刑事弁護プラクティス-新人弁護士養成日記』現代人文社(2013年9月)……雑誌季刊刑事弁護連載の単行本化。実際の刑事弁護事件の事例が豊富であり、その事件処理についてはとても参考になる。修習生・刑事弁護士必読。


〔裁判員裁判・公判前整理手続〕
司法研修所編『裁判員裁判における第一審の判決書及び控訴審の在り方』法曹会(2009年4月)……控訴審の運用については、東京高等裁判所刑事部陪席裁判官研究会(つばさ会)「裁判員制度の下における控訴審の在り方について」(判タ1288号5頁)、東京高等裁判所刑事部部総括裁判官研究会「控訴審における裁判員制度の審査の在り方」(判タ1296号5頁)もチェックすべし。

司法研修所編『裁判員制度の下における大型否認事件の審理の在り方』法曹会(2008年4月)

司法研修所編『難解な法律概念と裁判員裁判』法曹会(2009年4月)……司法研究報告書。「裁判員に分かりやすい審理の実現のために、専門用語の平易化という道を選ぶのではなく、各用語・法律概念の本当に意味するところを、刑事法に関するこれまでの研究成果と裁判例を分析することによって検討し、これを裁判員に伝えるための説明方法を考えようとする」司法研究。

司法研修所編『科学的証拠とこれを用いた裁判の在り方』法曹会(2013年3月)……司法研究報告書。

大阪刑事実務研究会「裁判員裁判における法律概念に関する諸問題」(判例タイムズ1350号-連載中)……上記『難解な法律概念と裁判員裁判』の難解概念研究のアプローチをも参考にしながら、裁判員裁判において争点となることが想定される法律概念や論点について、実際の裁判員裁判における実例を踏まえつつ、公判前整理手続や審理、評議の在り方等について研究する連載。全14回を予定。

酒巻匡編著『刑事証拠開示の理論と実務』判例タイムズ社(2009年11月)……公判前整理手続における証拠開示を題材とした論文集。多数の未公刊裁判例を収録しており参考になる。

大阪刑事実務研究会「公判前整理手続に関する諸問題」(判例タイムズ1294-1331号・全16回)……関西の刑事裁判官による共同研究。

日本弁護士連合会裁判員本部編『公判前整理手続を活かす』現代人文社(2011年7月・第2版)……公判前整理手続の運用状況をふまえて改訂された日弁連の公判前整理手続(半)公式テキスト。

杉田宗久『裁判員裁判の理論と実践』成文堂(2013年12月・補訂版)……元刑事裁判官による著作。

☆庭山英雄・宮﨑大輔・寺崎裕史編著『公判前整理手続の実務』青林書院(2015年2月)……弁護人の側から公判前整理手続を論じた著作。

〔量刑理論〕
原田國男『量刑判断の実際』立花書房(2008年11月・第3版)、『裁判員裁判と量刑法』成文堂(2011年11月)……量刑研究の第一人者である刑事裁判官による二部作。『実際』に収録されている論文はいずれも重要文献だが、とくに「量刑基準と量刑事情」、「量刑判断の実際」は刑事裁判における標準的な量刑実務を解説したものであり、修習生ならば必読である。

大阪刑事実務研究会編『量刑実務大系(全5巻)』判例タイムズ社(I・2011年9月、II・2011年10月、III・2011年11月、IV・2011年12月、V・2013年7月)……判例タイムズに連載された実務家・研究者による共同研究「量刑に関する諸問題」(判例タイムズ1183号-1325号・全26回)を単行本化したもの。第5巻は裁判員裁判該当罪種のうち代表的なものについて、当該罪種において特に重視すべき量刑因子についての類型的研究で書き下ろしで判例を収録したCD-ROM付き (第1巻『量刑総論』、第2巻『犯情等に関する諸問題』、第3巻『一般情状等に関する諸問題』、第4巻『刑の選択・量刑手続』、第5巻『主要犯罪類型の量刑』)。

第一東京弁護士会刑事弁護委員会編『量刑調査報告集』第一東京弁護士会(I・2000年8月、II・2008年8月、III・2010年4月、量刑不当破棄編・2011年3月)……一弁の「国選弁護結果報告書」を基礎資料として、罪名ごとに量刑その他の関連情報を集めた資料集(現時点で3冊+量刑不当破棄編1冊)。量刑不当破棄編は上訴審における量刑不当による破棄自判事例を集めたもの。刑事弁護人ならば必携。一般書店では市販されていないが、弁護士会館ブックセンターや至誠堂書店などで購入可能。

日本弁護士連合会裁判員本部編『裁判員裁判の量刑』現代人文社(2012年5月)……裁判員裁判における量刑データ集。

司法研修所編『裁判員裁判における量刑評議の在り方について』法曹会(2012年10月)……司法研究報告書。裁判員裁判に相応しい量刑評議の在り方、判決書の在り方、審理・公判前整理手続の在り方についての考察。第4章、量刑事情の考慮の在り方、は様々な量刑事情の意義を検討していて興味深い。


【法廷技術】
〔法廷技術〕
スティーヴン・ルベット著、菅原郁夫・小田敬美・岡田悦典訳『現代アメリカ法廷技術』慈学社(2009年4月)……米国の法廷技術指南書の邦訳。陪審裁判を念頭においた法廷技術であるため、尋問技法のみならずプレゼンテーション技法まで解説が及んでいるのが特徴。日本の裁判においても参考になるだろう。

八幡紕芦史、辻孝司、遠山大輔『入門法廷戦略-戦略的法廷プレゼンテーションの理論と技術』現代人文社(2009年12月)……裁判員裁判におけるプレゼン技法を題材とした(つまり、法律論ではない)、おそらく本邦初の本。著者は弁護士とプレゼンの専門家。

『DVDで学ぶ裁判員裁判のための法廷技術(基礎編)1-3巻』現代人文社(2011年2月、2013年2月、2014年2月)……法廷技術をテーマとしたDVD教材。

D・C・シーマーほか著、今在景子ほか訳『弁護士のための法廷テクノロジー入門』慈学社(2011年4月)……法廷におけるプレゼンテーション技術を題材とした著書。内容はプレゼン用機器の使用法からプレゼン立証に対する異議(アメリカ法)まで及んでいる。わが国ではほぼ未開の分野だけに興味深い。

C.B.アンダーソン著、石崎千景・荒川歩・菅原郁夫訳『裁判員への説得技法-法廷で人の心を動かす心理学』北大路書房(2014年4月)

〔取調べ技法〕
フレッド・E・インボー、ジョン・E・リード、ジョセフ・P・バックリー著、小中信幸・渡部保夫訳『自白─真実への尋問テクニック』ぎょうせい(1990年1月)……被疑者取調べ担当官のための取調べ尋問技法マニュアル。検察官志望者必読。原著:Criminal Interrogation and Confessions(5th edition ただし訳書は3版の翻訳)。本書の取調べ技法の問題点については、上掲『取調べ・自白・証言の心理学』も参照すべし。


〔尋問技術〕
加藤新太郎編著『民事尋問技術』ぎょうせい(2011年3月・第3版)……民事尋問技術の定番テキスト。3版から横書きになり巻末に民事尋問技術参考文献一覧が付された。専門家に対する尋問について、鑑定制度が法改正されたのにこれに対する言及がなされていない。

山室惠編著『刑事尋問技術』ぎょうせい(2006年12月・改訂版)……編著者である山室自身に尋問経験がないこともあり、弁護士からは必ずしも評判が良くない。

キース・エヴァンス著、高野隆訳『弁護のゴールデンルール』現代人文社(2000年3月)……英米の弁護士資格を有する著者による尋問技法マニュアル。原著:Keith Evans, "The Golden Rules of Advocacy" なお、同書には実質的な改訂版("Common Sense Rules of Advocacy for Lawyers")が出ており、「書面における弁護技法」や「ハイテク時代における弁護技術」などの章が追補され、合計100個のルールが掲載されているので、購入するなら後者がおすすめである。

フランシス・L・ウェルマン著、林勝郎訳『反対尋問の技術上下』青甲社(1973年2月,1973年6月)、梅田昌志郎訳『反対尋問』旺文社文庫(1979年10月、本書は電子書籍化されている。)……反対尋問実例集。古典。※両方とも原著:Francis L. Wellman "The Art of Cross Examination" は同じ。

ダイヤモンドルール研究会ワーキンググループ編著『実践!刑事証人尋問技術―事例から学ぶ尋問のダイヤモンドルール』現代人文社(2009年4月)……季刊刑事弁護への連載の単行本化。実際の刑事裁判を題材に仮想尋問失敗例と実例を対比しており実践的で参考になる。

大阪刑事実務研究会「証人尋問,被告人質問に関する諸問題」(判例タイムズ1318-1322号、全7回)……関西の刑事裁判官による共同研究。公判前整理手続・裁判員裁判を念頭においた証人尋問・被告人質問についての論点総まとめ。

大阪弁護士会刑事弁護委員会公判弁護実務部会『実践!刑事弁護異議マニュアル』現代人文社(2011年11月)……刑事公判における異議について網羅的に解説したマニュアル本。巻末付録の「尋問における異議申立一覧カード」は役に立つ。

大塚武一『30問30答 証人尋問ノート』東京図書出版(☆2014年10月・第2版)……ベテラン弁護士による新人弁護士向けの証人尋問指南書。とはいえ小手先のテクニック集ではなく、尋問を成功させるには丁寧な下準備が必要であるとされている。2版では20カ所以上を加筆・補正し、証人尋問実例に反対尋問の構造を付した(はしがき)。

〔供述心理〕

浜田寿美男『自白の心理学』岩波新書(2001年3月)、『<うそ>を見抜く心理学』NHKブックス(2002年3月)、『取調室の心理学』平凡社新書(2004年5月)……冤罪事件に積極的に関わっている心理学者による著作。供述調書の変遷等から供述の信用性を判断する供述分析を提唱。『自白の研究―取調べる者と取調べられる者の心的構図』北大路書房(2005年7月・新版)は大著。

高木光太郎『証言の心理学─記憶を信じる、記憶を疑う』中公新書(2006年5月)……自白の信用性判断につき浜田の供述分析と異なるアプローチを提唱。

エリザベス・F・ロフタス著、西本武彦訳『目撃者の証言』誠信書房(1987年9月)……目撃者証言の信憑性の乏しさについての心理学者による古典的文献。キャサリン・ケッチャムとの共著『目撃証言』岩波書店(2000年3月)は一般向けなので読みやすい。







【法曹倫理】


高中正彦『法曹倫理』民事法研究会(2013年4月)……同著者の『法曹倫理講義』の実質的な改訂版。200ケースにつきQ&A形式で法曹倫理について解説。裁判官倫理・検察官倫理についても載っている。

森際康友編『法曹の倫理』名古屋大学出版会(2011年4月・第2版)……実務家執筆箇所は読みやすいが、法哲学者である編者の執筆箇所は、はっきりいって意味不明な箇所も多い。

小島武司・柏木俊彦・小山稔編『テキストブック現代の法曹倫理』法律文化社(2007年9月)

『解説・弁護士職務基本規程』日本弁護士連合会(2012年3月・2版)……日弁連公式の弁護士職務基本規程の逐条解説。

東京三会有志・弁護士倫理実務研究会・編著『弁護士倫理の理論と実務-事例で考える弁護士職務基本規程』日本加除出版(☆2013年11月・改訂)……弁護士倫理研修用テキスト。

日本弁護士連合会弁護士倫理に関する委員会編『注釈弁護士倫理』有斐閣(1996年3月・補訂版、OD版2002年4月)……日弁連公式の旧弁護士倫理の逐条解説。

田中紘三『弁護士の役割と倫理』商事法務(2004年5月)……弁護士による弁護士倫理の体系書。

飯村佳夫・清水正憲・西村健・安木健『弁護士倫理』慈学社(2014年9月・第2版)……薄いが職務基本規程のみならず広告規程や懲戒事例集も掲載。

加藤新太郎『コモン・ベーシック弁護士倫理』有斐閣(2006年10月)……裁判官による民事弁護士倫理の演習本。『弁護士役割論』弘文堂(2000年11月・新版、2014年12月OD版対応)も重要文献。

飯島澄雄・飯島純子『弁護士心得帖(1060の懲戒事例が教える)』レクシスネクシス・ジャパン(2013年1月)……弁護士会の懲戒事例集。同著者による『弁護士倫理─642の懲戒事例から学ぶ10か条』の増補版。弁護士志望者なら必読。

藤倉皓一郎監修、日本弁護士連合会訳『完全対訳ABA法律家職務模範規則』第一法規(2006年8月)……アメリカ法曹協会の法律家職務模範規則(Model Rules of Professional Conduct)2004年版の対訳。

田中宏『弁護士のマインド-法曹倫理ノート』弘文堂(2009年10月)……弁護士による弁護士倫理テキスト。読み物としてもおもしろい。ただし企業内弁護士、弁護士広告といった最近のトピックには言及されていないので注意。

平沼高明法律事務所編『弁護士のためのリスクマネジメント-事例にみる弁護過誤』第一法規(2011年7月)……弁護士にまつわる紛争民事裁判例を題材に解説をくわえたもの。懲戒事例を集めた類書はあるが、民事裁判例を素材としている点が目新しい。紛争予防のためのKey Pointを付しているのが特徴。

高中正彦『判例弁護過誤』弘文堂(2011年7月)……弁護過誤(や弁護士業)にまつわる公刊裁判例を、類型毎に分類し「事案の概要」、「判決結果」、「判決要旨」、「コメント」を付したもの。上記『リスクマネジメント』と同様、公刊民事裁判例を素材としている。弁護過誤の防止策7か条をまとめており、参考になる。

加藤新太郎編『ゼミナール裁判官論』第一法規(2004年6月)……裁判官倫理から裁判官のストレス解消法まで。任官希望者必読。

瀬木比呂志『民事訴訟実務と制度の焦点』判例タイムズ社(2006年6月)、☆『法曹制度・法曹倫理入門』判例タイムズ社(2011年7月)……ベテラン裁判官による法曹制度についての提言、後輩へのアドバイス等を含む。上記『入門』は上記『焦点』の法曹制度等のパートを概説したもの。任官希望者必読。

日本弁護士連合会倒産法制等検討委員会・編『倒産処理と弁護士倫理』きんざい(2013年7月)……倒産処理にまつわる弁護士倫理問題について検討。弁護士必携。

髙中正彦ほか編著『弁護士の失敗学 冷や汗が成功への鍵』ぎょうせい(2014年7月)……弁護士業務にまつわるヒヤリ・ハット事案、懲戒事案を題材に失敗の防止法を考えるための著書。弁護士必携。

  • 最終更新:2015-09-29 23:08:18

このWIKIを編集するにはパスワード入力が必要です

認証パスワード