新・司法試験基本書まとめwiki―商法(企業取引)

商法(企業取引)
丸山秀平『基礎コース商法I総則・商行為法/手形・小切手法』新世社(2010年1月・第3版)……商総・商行為、手形法を1冊で。手形学説では逐一創造説に分量を裂いているため、契約説での論証が薄くなってしまっている。

小川宏幸『コンパクト商法総則・商行為法/手形・小切手法』新世社(2011年11月)……丸山と同様に商法総則商行為手形小切手を一冊にまとめたものだが、丸山よりもさらに薄い。某予備校のテキストに指定されて人気に。


【総則・商行為】
近藤光男『商法総則・商行為法』有斐閣(2013年4月・第6版)……たんたんと判例・通説・自説を説明。298頁と薄いが、新司法試験に商法・会社法の択一が存在した時代には、択一対策にはこれ一冊で十分と言われていた。

江頭憲治郎『商取引法(法律学講座双書)』弘文堂(2013年5月・第7版)……実務家必携の商取引法全般に関する教科書。商法自体に規定がある旅客運送等以外にも、販売代理店やフランチャイズ契約等現代における商取引についても扱っている。商法に範囲を限定していないため、学生が試験対策として使うにはやや使いづらい。なお,はしがきによると,「商行為総則の各規定は,それが実際上もっとも問題となる本書の記述の各部分におりこまれている」。

森本滋編『商法総則講義』『商行為法講義』成文堂(2007年7月・3版,2009年4月・3版)……2冊併せるとそれなりの分量になるが、趣旨から丹念に論じており、初学者でも理解しやすい。図表の類はないが、とても読み手に親切な良書。引用判例は豊富なのに肝心の判例索引がないのが玉に瑕。

大塚英明・川島いづみ・中東正文『商法総則・商行為法(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(2008年12月・第2版)

藤田勝利・北村雅史編『プライマリー商法総則・商法行為』法律文化社(2010年3月・3版)

関俊彦『商法総論総則』有斐閣(2006年6月・第2版)……著者の熱気の伝わる独特の文章。少数説多数。タイトルの通り、商行為法が載っていない。

遠藤喜佳・松田和久 共著『商法総則・商行為法 プチ・コンメンタール』税務経理協会 (2010年4月)…商法総則・商行為法に関する160頁の注釈書。ほとんど解説はなく、新しいことが唯一の利点。予備校本の方がマシなレベルである。まともな注釈書は1997年の基本法コンメンタールが最後になっている。

片木晴彦『基本講義 商法総則・商行為法』新世社(2003年5月・第2版)……京大系。森本編『商法総則講義』や有斐閣アルマを書いている。

青竹正一『特別講義 改正商法総則・商行為法』成文堂(2014年4月・第3版補訂版)


〔総則・商行為(旧商法)〕
鴻常夫『商法総則』弘文堂(1999年4月・新訂5版)……名著。鈴木以後の通説・判例の到達点。慣習法・実定法としての商法の解釈について示唆に富む第1章と第2章、商法総則解説部分は徹底して無駄のない解説。ひと通り勉強の終わった者が読むべき本。

上柳克郎他『商法総則・商行為法』有斐閣双書(1998年3月・新版)

鈴木竹男『商行為法・保険法・海商法』弘文堂(1993年3月・全訂2版)


【手形・小切手】
早川徹『基本講義手形・小切手法』新世社(2007年3月)……交付契約説+権利外観説。定番の一冊。薄い本だが2色刷で文章も分かりやすく、結論も無難なもの。引用される判例には百選の判例番号が付され、参照に便利。

森本滋編『手形法小切手法講義』成文堂(2010年4月・第2版)……未完に終わった森本の法教連載(手形法小切手法の理論と実務)をベースにして、京大系の学者・実務家による共著で教科書化したもの。銀行員が手形取引実務を解説した「銀行取引と手形」なる章、約束手形の作成から消滅までの流れを解説した「約束手形の一生」なる章が含まれているのが本書の特徴。交付契約説+権利外観説ベースで判例実務を念頭においた無難な見解でまとめており、現時点で最適なテキストのうちの一つ。早川徹教授も共著者の一人であり、執筆部分の記述はかなり被っている。

川村正幸『手形・小切手法(新法学ライブラリ15)』新世社(2005年10月・3版)……著者は金融取引法の権威であり、金融取引法の一貫として手形法・小切手法を解説している。通説に近い。読みにくさを指摘する声も。徹底した権利外観法理。簡易版の『基礎理論手形小切手法』法研出版(2007年12月・2版)あり。

坂井芳雄『手形法小切手法の理解』法曹会(1996年3月)……元裁判官(調査官経験あり名古屋高裁長官で定年退官)で手形法実務の第一人者。概説書ながら実務でも使えるように訴訟上の立証責任まで意識して解説。森田果教授いわく「唯一無二の名著」。手形理論は創造説を支持、白地補充権概念不要論を採る点に特徴。無因論を維持しつつも有因論に同情的見解を示す。記述もわかり易く名著だが書店店頭ではなかなか見かけない。法曹会や成文堂に在庫あり(27年4月現在)。

小塚荘一郎・森田果『支払決済法―手形小切手から電子マネーまで』商事法務(2010年9月)……タイトルどおり、手形・小切手に限らず、電子マネーや銀行振り込み等々の現存する支払決済の法理について、その機能を説明したもの。手形、小切手以外の部分は制度の説明に徹しているきらいもあるが、電子マネーやデビットカードの法的仕組みについて解説しているものは他になく、参考になる一冊。

大崎晴由『書式 手形・小切手訴訟の実務』民事法研究会(2009年9月・全訂2版)……実務家向けの本だが、論文で手形が出なくなった新司法試験では十分な情報量がある。初心者にもわかりやすく、訴訟実務に沿って手形法を理解できる良書である。

田邊光政『最新手形法小切手法』中央経済社(2007年4月・5訂版)……独自説多め。権利外観理論で大体一貫しているので、答案に使い易くはある。

上柳克郎・鴻常夫・北沢正啓編『手形法・小切手法 商法講義(有斐閣双書)』(1998年4月・新版)……手形法版ダットサン。『会社法(LEGAL QUEST)』の執筆者の一人である伊藤靖史が2009年4月時点での推薦教科書リストの筆頭にあげるなど本自体の出来はとても良い。著者数名が鬼籍に入っており、改訂は望めないが、手形法理論の進展や判例は少ないのであまり問題はない。基本が過不足なくコンパクトにまとめられており、中級者以上がまとめとして読むのにお勧め。ただし、判例索引はないので注意。

田邊宏康『手形小切手法講義』成文堂(2008年3月・第2版)……法学部学生向けの教科書。交付契約説+権利外観理論。薄いがケース・図多用で読みやすい。

前田庸『手形法・小切手法入門』(1983年3月)。創造説。文章は分かりやすい。なお,同一著者による手形法学の到達点を示す本格的体系書として『手形法・小切手法』(1999年2月)。

裁判所書記官研修所編『手形法小切手法講義案』司法協会(2001年6月・6訂版)……判例ベース(発行説)。ただし出題範囲を超える記述もあるので注意。

末永敏和『手形法・小切手法―基礎と展開』中央経済社(2007年6月・第2版)……非常に薄い。

関俊彦『金融手形小切手法』商事法務(2003年11月・新版)……実務を強く意識した独自説。旧来の「転々流通する手形」像に疑問を提起している。

木内宜彦『手形法小切手法』勁草書房、復刊版は新青出版(1982年4月・第2版、復刊1998年4月)……契約説。かつての創造説全盛時代における契約説の旗手。著者夭折の為、古い。又、出版社廃業のため、入手したいなら急いだ方がいいかもしれない。

倉沢康一郎『手形判例の基礎―リーディング・ケースによる手形法入門』日本評論社(1990年3月)……故人。元司法試験委員。契約説+権利外観説。木内とともに契約説の支持を拡大することに貢献。最重要判例を使った解説、演習本。



〔演習〕
田邊光政『旧司法試験 論文本試験過去問 手形法小切手法(LIVEシリーズ)』辰已法律研究所(2004/11・新版)……平成16年度までの旧司法試験の過去問につき田邊教授が解説講義をした講義録が元となっている。新版では平成16年度までの問題解説が追加されており、手形法・小切手法の演習書としては極めて評判が高かった。特に手形法についての理論的進展、重要判例はないので、現在でも第一級の本である。絶版になっていたが、オンデマンド版で復活している。とはいえ、手形の衰退に伴い、新司法試験でも手形法は軽視されているためここまでやる必要があるかは疑問がある。

丸山秀平『演習講義 手形・小切手法』法学書院(2001/02・第2版)……旧試験チックな有価証券法の事例問題集。全37問で難易度も旧試験レベル~やや簡単め。交付契約説ベースの解説。ちなみに最後の商行為法のある分野が絡む問題は論点を知っていること自体マニアック。

  • 最終更新:2015-09-29 00:47:28

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