新・司法試験基本書まとめwiki―その他読み物

その他読み物
科目横断的な参考書、ロー・学部での課題の処理の際に役立つ本、その他(間接的にせよ)司法試験合格に役立つ書籍。

【科目横断的な参考書】
団藤重光『法学の基礎』有斐閣(2007年5月・2版)……重鎮による基礎法学の概説書。タイトルには「基礎」と書いてあるが、内容はかなり高度であり、入門書ではなくて出門書である、などと言われる。主体性理論をはじめとする著者の独自色がおおいに発揮されており、読み返すたびに新しい感動に出会える。受験勉強の息抜きに。

三ケ月章『法学入門』弘文堂(1982年3月)……法学部一年生向けに書かれた法律学の入門書。団藤・基礎と違って、こちらは正真正銘の入門書である。ともすれば抽象的になりがちな議論も、著者一流の文章によって読者を飽きさせない。法科大学院制度や裁判員制度といった一連の司法制度改革を“現認”している我々の視点で読んでみると、興味深い記述も多い。

星野英一『法学入門』有斐閣(2010年11月)……よくある基本六法の初歩的な知識を敷衍したものでなく、法解釈の基本的な視座を学ばせようとする本。詳しくは「書斎の窓」2011年4月号における大村敦志教授による書評を参照。

井上達夫編『現代法哲学講義』信山社(2009年4月)……「なぜ法哲学を学ばなくてはならないのか」ではなく「なぜ法哲学を学ばないのか」が問われるべきである(はしがき)。具体的ケースを題材にしているので法哲学の本としては珍しく読みやすいと思われる。

林修三『法令用語の常識』『法令作成の常識』『法令解釈の常識』日本評論社(1975年5月,1975年11月,1987年10月)……元内閣法制局長官による3部作。立法担当官必読の基本文献。

吉田利宏『新 法令用語の常識』日本評論社(2014年10月)……上記林3部作の承継をめざす著書。現在、法学セミナーに「新・法令解釈・作成の常識」を連載中。

中島誠『立法学―序論・立法過程論』法律文化社(2007年10月・新版)

大森政輔・鎌田薫編『立法学講義』商事法務(2011年3月・補遺)

山本庸幸『実務立法技術』『実務立法演習』商事法務(2006年3月,2007年2月)

石毛正純『法制執務詳解』ぎょうせい(2008年4月・新版)

大村敦志・道垣内弘人・森田宏樹・山本敬三『民法研究ハンドブック』有斐閣(2000年4月)……東西横綱民法教授による民法研究方法の公式マニュアル。本書のようなマニュアルを出版することについて物議をかもした。

平井宜雄『法律学基礎論覚書』『続・法律学基礎論覚書』有斐閣(1989年10月,1991年3月、OD版2001年3月)……利益考量論を批判する法解釈論についての著書であるが、内容は法学教育論、「良い」法律論まで及ぶ。上記2冊の論文は『法律学基礎論の研究(平井宜雄著作集1)』有斐閣(2010年12月)に収録されている。

木庭顕『現代日本法へのカタバシス』羽鳥書店(2011年10月)……ローマ法研究者による現代法(法学・実務・法学教育も含む)に対する洞察の書。伝統的な法学者の文章とはかけ離れており、難解な箇所もある。「法学再入門」(法教連載)、『ローマ法案内』、本書の順に読み進めるのがよい。


【ロー・学部での課題の処理の際に役立つ本】
〔リサーチ〕
中野次雄編『判例とその読み方』有斐閣(2009年3月・3訂版)……内容はタイトル通り。著者は皆、最高裁調査官経験の元裁判官。「より正確にいえば、裁判官は「最高裁判所のするであろう判断」に拘束されるのであって、判例はこれを予測するための―重要な―資料として意味をもつのであり、判例が直接裁判官を拘束するのではないことが明らかになる。」。(22-23頁)

指宿信・井田良・夏井高人・山野目章夫監修、いしかわまりこ・藤井康子・村井のり子『リーガル・リサーチ』日本評論社(2008年3月・3版)……法令・判例・文献検索方法につき解説した著書。ロースクールで買わされることが多い。3版になって表紙がややスタイリッシュになったが、自発的に読むことは殆どないだろう。

☆田高寛貴・原田昌和・秋山靖浩『リーガル・リサーチ&リポート』有斐閣(2015年2月)……


〔ライティング〕
J.ヴォロック著、指宿信・岩川直子訳『リーガル・ライティング』日本評論社(2009年4月)……法律論文、レポートの書き方マニュアル。Eugene Volokh "Academic Legal Writing: Law Review Articles, Student Notes, Seminar Papers, and Getting on Law Review"(第2版)の翻訳。

スティーブン・D・スターク著、小倉京子訳『リーガルライディング-訴訟に勝つ実践的文章術』日本評論社(2010年6月)……法律文書、とくに訴訟における書面の書き方マニュアル。ヴォロックの上掲書よりより実践的。Steven D. Stark "Writing to Win: The Legal Writer"の抄訳(なお、原著は2012年に改訂されている)。

田中豊『法律文書作成の基本』日本評論社(2011年2月)……法律文書作成マニュアル。上記2冊より実践的・法的な解説が多め。


〔交渉術〕
加藤新太郎編、柏木昇・豊田愛祥・堀龍児・佐藤彰一『リーガル・ネゴシエーション(民事プラクティスシリーズ2)』弘文堂(2004年7月)

太田勝造・野村美明編『交渉ケースブック』商事法務(2005年4月)

小林秀之編『交渉の作法-法交渉学入門』弘文堂(2012年2月)

R・フィッシャー、W・ユーリー著、金山宣夫・浅井和子訳『ハーバード流交渉術』三笠書房(1990年1月)……「交渉術本」の元祖。

W・ユーリー著、斎藤精一郎訳『ハーバード流NOと言わせない交渉術』三笠書房(1995年6月)

W・ユーリー著、峯村利哉訳『最強ハーバード流交渉術』徳間書店(2008年3月)

マイケル・S・リーフ、H・ミッチェル・コールドウェル、ベン・バイセル著、藤沢邦子訳『最終弁論―歴史的裁判の勝訴を決めた説得術』ランダムハウス講談社文庫(2008年6月)……著名事件の最終弁論(論告含む)集。クラレンス・ダロウによる最終弁論は感動的。


〔ローヤリング〕
名古屋ロイヤリング研究会編『実務ロイヤリング講義―弁護士の法律相談・調査・交渉・ADR活用等の基礎的技能』民事法研究会(2009年1月・2版)

田村智幸、札幌弁護士会法科大学院支援委員会編著『実践ローヤリング=クリニック―臨床系教育への指針』法律文化社(2006年10月)

小島武司監修『実践民事弁護の基礎―訴え提起までにすべきこと―』LexisNexis(2008年3月)

加藤新太郎編、羽田野宣彦・伊藤博『リーガル・コミュニケーション(民事プラクティスシリーズ1)』弘文堂(2002年9月)

菅原郁夫・岡田悦典編、日弁連法律相談センター面接技術研究会『法律相談のための面接技法―相談者とのよりよいコミュニケーションのために』商事法務(2004年1月)

中村芳彦・和田仁孝『リーガル・カウンセリングの技法(リーガル・スキル・ブックス2巻)』法律文化社(2006年3月)

菅原郁夫・下山晴彦編『実践法律相談─面接技法のエッセンス』東京大学出版会(2007年7月)


〔和解技術・調停技法〕
草野芳郎『和解技術論』信山社(2003年6月・2版)……元裁判官が和解(期日)の運営から説得技術、和解案まで解説した著書。

レビン小林久子『調停者ハンドブック―調停の理念と技法』信山社(1998年4月)、クリストファー・W・ムーア著、レビン小林久子編訳『調停のプロセス―紛争解決に向けた実践的戦略』日本加除出版(2008年3月)

キャサリ-ン・M・スキャンロン著 東京地方裁判所ADR実務研究会訳『Mediator's Deskbook―調停者への道』三協法規(2003年7月)

飯田邦男『こころを読む実践家事調停学―当事者の納得にむけての戦略的調停』民事法研究会(2008年2月・改訂増補版)


【法と経済学など】
ハウェル・ジャクソンほか著、神田秀樹・草野耕一訳『数理法務概論』有斐閣(2014年3月)……"Analytical Methods for Lawyers 2nd edition"(ハーバード法科大学院の教科書)の全訳。決定分析、ゲーム理論、会計、ファイナンス理論、ミクロ経済学、法の経済分析、統計学などの数理的学問全般にわたる概説書。まずはここから。

☆常木淳『法律家をめざす人のための経済学(岩波テキストブックスS)』岩波書店(2015年1月)……ミクロ経済学と法の経済分析(法と経済学)の入門書。京大ローと阪大ローにおける著者の「法と経済学」関連の講義ノートを書籍化したもの。

スティーブン・シャベル著、田中亘・飯田高訳『法と経済学』日本経済新聞出版社(2010年1月)

藤田友敬「基礎講座・Law & Economics会社法(1)-(12)」法教259-270号(未完)……第1回に示された大目次5の途中で中断?株式会社の基礎事項(有限責任、取締役の責任、債権者保護等)の伝統的説明の問題点や、最近の教科書でのニュアンスの違いなどが見えてくる。

三輪芳朗/神田秀樹/柳川範之編『会社法の経済学』東京大学出版会(1998年11月)……法と経済学の書籍の中でも法解釈学寄りの本。

田中亘「敵対的買収に対する防衛策についての覚書(一)(二・完)」民商法雑誌131巻4=5-6号……高水準の議論でありかつわかりやすい。ニッポン放送事件以降の敵対的買収を考える上で必読。『企業買収防衛戦略Ⅱ』(商事法務)にも集録。

マイクル・O・フィンケルスタイン著、太田勝造監訳『法統計学入門-法律家のための確率統計の初歩』木鐸社(2014年8月)……"Basic Concepts of Probability and Statistics in the Law"の全訳。(米国の)具体的判例を素材に統計学について解説。やや難解。


【司法エッセイ・モチベーション】
ロイド・P・ストライカー著、古賀正義訳『弁護の技術』青甲社(1974年9月・改訂版)……弁護技術についての古典かつ名著。「しかしながら、もし彼がすでに世間から裁きを受けてしまっているというだけの理由で、彼の弁護人になることを断るとすれば、君は腰抜けであって、男子ではない。」「しかし、もし世評の良くない事件であるというだけの理由でその事件の弁護を拒絶するようでは、弁護士たるの名に価しない。けだし、法律家にあっては、世間から良く思われないということはしばしば名誉の事柄であるから。」(9頁)

三宅正太郎『裁判の書』慧文社(2006年10月復刊)……大正・昭和(戦前)期の裁判官によるエッセイ集。裁判官の気概から処世術まで、任官志望者必読。

伊藤榮樹『だまされる検事』『まただまされる検事』立花書房(1982年10月,1987年6月)……元検事総長によるエッセイ集。

末弘厳太郎(川島武宜編)『嘘の効用上下』冨山房百科文庫(1998年6月,1994年6月)

ダグラス・K・フリーマン『リーガル・エリートたちの挑戦 コロンビアロースクールに学んで』商事法務(2003年3月)……日本育ちのバイリンガル弁護士がトップクラスのロースクールでの体験談を綴ったもの。これを読むと日本のロースクール生のほとんどが単純に勉強時間が足りないと感じるほど。

共同通信社社会部『東京地検特捜部』講談社+α文庫(1998年4月)……検察志望者必読のモチベーションうp書。

大野正男『社会のなかの裁判』有斐閣(1998年9月)、『弁護士から裁判官へ─最高裁判事の生活と意見』岩波書店(2000年7月)……リベラル弁護士(元最高裁判事)の裁判雑文&少数意見集。

アラン・ダーショウィッツ著、小倉京子訳『ハーバード・ロースクール アラン・ダーショウィッツ教授のロイヤーメンタリング』日本評論社(2008年1月)……ハーバードLS教授によるロー生向けのエッセイ本。

安田好弘『死刑弁護人─生きるという権利』講談社+α文庫(2008年4月)……光市事件の弁護人による手記。刑事弁護志望者なら必読。

広中俊雄・五十嵐清編『法律論文とその書き方』有斐閣(1983年4月)……法律論文を書く際に重要な点、具体的な小論文の書き方、執筆者が学生時代初めて論文を書いた際の思い出、という構成。既に鬼籍に入った人が多いが、執筆者は全員その分野の権威である。三ヶ月章執筆部分は必見。

滝井繁男『最高裁判所は変わったか-一裁判官の自己検証』岩波書店(2009年7月)……弁護士出身の元最高裁判事の回顧録。第2部では行政訴訟・民事訴訟・刑事訴訟の各最高裁判例の動向を検証しており、非常に参考になる。

佐藤幸治『憲法とその“物語”性』有斐閣(2003年6月)……学問的意味の「人権」と日常的に市民が使う「人権」という言葉の差異を憲法学者からの視点で語っている。憲法の勉強に疲れた時に読んでみるのが良い。

  • 最終更新:2015-09-28 21:07:02

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