司法試験基本書まとめwiki@2ch&LSC―民法(総合)

民法(総合)
民法は範囲が広いこともあり、1人の著者が全範囲をカバーする基本書を完成させるのには相当の年月を要する。
それゆえ、例えば「総則と契約だけ執筆済。その他の分野は執筆中」というような中途段階にとどまる基本書も少なくない。
このページでは原則として、民法のほぼ全範囲の執筆を完成させた書籍が紹介される。
※備考:平成18年法人部分の改正(平成20年12月1日施行。【法】)

【基本書(平成16年民法現代語化以降)】
〔メジャー〕
【法】内田貴『民法I-IV』東京大学出版会(I 総則・物権総論: 2008年4月・第4版,II 債権各論: 2011年2月・第3版,III 債権総論・担保物権: 2005年9月・第3版,IV 親族・相続: 2004年3月・補訂版)……星野説を中心とする歴々の東大系研究者の研究成果を平易に解説したテキスト。内容は高度だがケースメソッド重視で読みやすい。一方、要件・効果の記述はやや曖昧で、本文中に示されていればいいがたまに要件の説明がコラムに投げられていることすらある。さらに通説より自説を強調する傾向が見られ、現在の通説をあたかも克服された説のように説明したり、未だ重視されている判例について先例性は失われたと述べたりするなどの難点も見られる。ことに総則・物権のⅠはかなりこの傾向が強く、なまじ読みやすい分初学者がこれを最初に読むと大変なことになりうるのでこれだけで学習するのはやや危険とも思われる。先に学部の講義か後述のSシリーズや川井などで判例・通説を学んでおくべきであろうか。IVは増刷の際に民法現代語化対応。

【法】山田卓生ほか『民法I-V(有斐閣Sシリーズ)』有斐閣(I 総則: 2007年9月・第3版補訂版,II 物権: 2010年3月・第3版補訂版,III 債権総論: 2012年4月・第3版補訂版,IV 債権各論: 2009年6月・第3版補訂版,V 親族・相続:2012年9月・第4版)……定評のあるSシリーズ。入門はもとより、択一用のまとめテキストにも好適(ただし全ての肢を網羅している訳ではない)。ロースクール生の間でも人気がある。物権と債権総論がとくに好評だが、基本的にはずれはない。但し、親族・相続に関しては、伊藤執筆部分で異説が展開される場面が多く、使いにくいと言われる。

【法】近江幸治『民法講義I-VII』成文堂(I 民法総則: 2012年4月・第6版補訂版,II 物権法: 2006年5月・第3版,III 担保物権法: 2007年4月・第2版補訂版,IV 債権総論: 2009年3月・第3版補訂版,V 契約法: 2006年10月・第3版,VI 事務管理・不当利得・不法行為: 2007年12月・第2版,VII 親族法・相続法: 2010年1月)……全分野完結。早大教授。内田以前のシェアNo.1。見た目は予備校本風だが内容はちゃんとしていて、学者からの推薦も多い。学説紹介が豊富で、図を用いて説明したりしているので独習用に最適(ところどころ異説を採用している部分には注意:物権行為の独自性を肯定する立場からの売買契約の記述など)。著者の専門である担保物権法には特に定評あり。

【法】川井健『民法概論I-V』有斐閣(I 民法総則: 2008年3月・第4版,II 物権: 2005年10月・第2版,III 債権総論: 2009年4月・第2版補訂版,IV 債権各論: 2010年12月・補訂版,V 親族・相続: 2007年4月)……我妻最後の後継者。全範囲完結。図表の類を用いないオーソドックスな基本書。伝統的通説の体系にのっとって、地引網のように、ひっかかる論点を次々に拾っていく。とりあげられる判例・学説は網羅的で、まさしく民法概論の名にふさわしい。自説主張は控えめで、各説を比較的公平に紹介しているために、記述はやや平板だが、非常にわかりやすい。しかし全体的に内容が古く、債権法改正にまつわるような最新のホットトピックには対応していない。また、概説書に徹するゆえに、かえって論点ごとのつながりが悪くなっていることも少なくない(全体として、論点をぶつ切りにして提供されている印象を受ける)。物権、特に担保物権の記述は、主要判例の判示事項、判決要旨を並べただけといってもよく、その値段に見合うものとはいえない(見方を変えれば、判例の数・網羅性につき類書中群を抜いている。すなわち択一には圧倒的強さを有し得る。)。そういう意味では、いわゆる予備校本に似ていない訳でもないが、こうした基本書としての「無色透明さ」があるゆえに、幅広いニーズに応えることができるのも事実である。とくに、単一著者で揃えたいけど内田は性に合わないという人は本書を試してみるとよい。家族法は択一対策に好適。

〔その他〕
【法】我妻栄ほか『民法1-3』勁草書房(1 総則・物権法: 2008年3月・第3版,2 債権法: 2009年2月・第3版,3 親族法・相続法: 2013年1月・第3版)……通称「ダットサン」。伝統的通説。小型だが民法と関連法の概要・歴史、条文の趣旨・要件・効果を網羅している。小型ゆえに初学者には向かないが、直前期の総まとめに定番の一冊。川井によって最新の判例が補われているものの、扱う学説は古く、試験対策としては心もとないところもある。しかし、非常に読みやすく、安定感のある記述で今なお人気がある。我妻・有泉のみが執筆していた頃のダットサンは、今と大分文章が違っている。『民法案内1-11,13』(契約各論上(使用貸借まで)+事務管理・不当利得・不法行為が刊行済み)は講義口調の格調高い入門書。我妻民法講義とは異なる見解を採用していたりするので学術的価値もある。ちなみに13巻は川井執筆で絶筆(弟子の良永が補筆)。民法案内も判例や学説に古いところがあるためこれだけでは心もとないが、副読本としてそばに置いておくと心強い。最近の基本書で説明を省いている部分なども詳細な説明があるため知識を補うには十分である。

【法】平野裕之『コア・テキスト民法 I-VI』新世社(2011年6月)……財産法完結。未修者から上級者までを対象とした中級テキスト。著者による『基礎コース民法』と『民法総合シリーズ』の間のレベルとの位置づけ。判例通説をわかりやすく解説しているのはもちろん、このクラスのテキストでは珍しく学説の最新動向や著者の自説もきちんと明示しており独習にも耐える内容となっている。図表・網掛け・下線に加え、レジュメ的な文体は好みがわかれるところ。理論面の解説に重きを置いているので、択一的知識は択一六法等で適宜補充すべし。

【法】佐久間毅ほか『民法I・II・V・VI(LEGAL QUEST)』有斐閣(I 総則: 2010年11月,II 物権: 2010年5月,V 事務管理・不当利得・不法行為: 2011年11月,☆VI 親族・相続: 2015年3月・第3版予定)......共著本。VIの出来が良い一方で、I・II・Vは記述のムラが激しく、やっつけ仕事ぶりが出てしまっている。1の執筆者に佐久間を含むが、佐久間『民法の基礎』にはない利点といえば練習問題付であることくらいか。

【法】大村敦志『基本民法I-III』有斐閣(I 総則・物権総論: 2007年3月・第3版,II 債権各論: 2005年4月・第2版,III 債権総論・担保物権: 2005年5月・第2版)……学界を支配した鳩山・我妻・星野の系譜を継ぐ民法学のトップランナー。財産法完結(なお、親族相続の出版予定はない)。2色刷り。内田民法と同じ体系で、コンパクトにまとめている。初学者向けながら、高度な内容にも踏み込んでいる部分もあり、上級者であっても得るものが多い。むしろ、非常に広い行間が初学者にはやや難しく、他の基本書を読んだうえで読む二冊目の基本書に最適だろう。なお、著者自身も本書だけではなく他の本との併読を進めている。副読本として『もうひとつの基本民法Ⅰ・Ⅱ』有斐閣(Ⅰ 2005年2月,Ⅱ 2007年10月)。一般向けの著書も多数。『民法のみかた-『基本民法』サブノート』有斐閣(2010年6月)は民法全分野(家族法含む)にわたる必要最低限の情報を凝縮したレジュメで、学者が書いた予備校まとめ本といった趣き。また、新シリーズとして『新基本民法7 家族編』有斐閣(☆2014年12月)。こちらは全八巻を刊行予定(はしがき)とのこと。

加藤雅信『新民法大系I-V』有斐閣(I 民法総則: 2005年4月・第2版,II 物権法: 2005年4月・第2版,III 債権総論: 2005年9月,IV 契約法: 2007年4月,V 事務管理・不法利得・不法行為: 2005年4月・第2版)……財産法完結、ただし担保物権法はない。歴史的視座、比較法的視座、法社会学・法人類学的視座から独自の民法理論を構築している。民法の関連分野の記載も充実。学生を主要な読者層としているため基本的事項・通説(我妻説)・判例の紹介が平易な文章できちんとされているほか、要件事実論にも配慮してある。また、少数学説も網羅しており、事項索引・判例索引の他、条文索引や詳細な参考文献一覧、更には新旧の民法・破産法の条文対照表まで付く至れり尽くせりの本である。が、分量の関係で自説の説明以外はかなり圧縮されている上、論点落ちもある。なお、研究書としての性格も持たせているため、部分的には極めて高度である。

【法】田山輝明『民法要義I-VI』成文堂(I 民法総則:2010年7月・第4版,II 物権法:2012年5月,III 担保物権法:2013年10月・第3版,IV 債権総論:2011年4月・第3版,V 契約法:2006年5月,VI 事務管理・不当利得・不法行為:2011年2月・第2版)……財産法完結。手堅い記述ながらも、図表やケースメソッドを多用しており、理解しやすい。

千葉恵美子ほか『民法2・3・4・7(有斐閣アルマSpecialized)』有斐閣(2 物権: 2008年2月・第2版補訂版,3 担保物権: 2005年12月・第2版,4 債権総論: 2004年4月,7 親族・相続: 2014年10月・第4版)……7の親族相続はスタンダードな家族法の教科書として広く使われている。なお、有斐閣アルマBasicには【法】山野目章夫『民法 総則・物権』(2012年3月・第5版)と、松川正毅『民法 親族・相続』(2014年12月・第4版)がある。

【法】小野秀誠ほか『ハイブリッド民法1-5』法律文化社(1 民法総則: 2014年4月・第2版,2 物権・担保物権法: 2007年3月,3 債権総論: 2006年11月,4 債権各論: 2007年4月,5 家族法: 2012年4月・第2版)……新トピックも網羅。薄いので未修向けか。5の家族法は定評あり。

奥田昌道ほか『法学講義民法1-6』悠々社(1 総則: 2007年・第2版,2 物権: 2005年10月,3 担保物権: 2006年7月,4 債権総論: 2006年,5 契約: 2008年,6 事務管理・不当利得・不法行為: 2006年)……財産法完結。

平野裕之『基礎コース民法I・II』新世社(I 総則・物権法: 2005年4月・第3版,II 債権法: 2005年4月・第2版)……2冊で財産法全分野を概説。著書曰く現代のダットサンを目指したとのこと。


【入門書】
【法】潮見佳男『入門民法(全)』有斐閣(2007年12月,2011年12月・補訂)……1冊で民法全分野をカバー。パンデクテン体系に沿う。重要な論点の記述は厚いが、その他の論点は大胆に省略されており、試験向きの実践的なまとめ本に仕上がっている。当然のことながら網羅性は低い。また、タイトルは入門であるが、十分な説明はなく、入門用途には適さない(民法全体を学んだ者のための再入門の本であると著者も述べている)。近時、ロースクール生の間でまとめ本として絶大な支持を得ている。なお、著者は債権法に関しては一流の学者であるが、物権法については専門外のため本を書けるほどの知識がないと公言しており、本書の執筆も出版社に頼まれて仕方なく行ったものである。したがって、物権法は他の書籍の記述をなぞるだけになっており、穏当な記述とも平凡な記述とも言え、賛否が分かれる。通称、潮見赤本。

【法】川井健『民法入門』有斐閣(2012年7月・第7版)……民法全分野カバー。パンデクテン体系に沿う。タイトルには「入門」とあるが、誰がどう見ても、国家試験受験生が直前期にさっと通読するための本である。判例の準則もしばしば簡略化しているので、読み手の学力次第では使いこなせない可能性も。くだらない誤植や脱字の類がちょくちょく見られるところがやや残念。潮見赤本の出版以降はシェアが後退しており、著者が逝去したため、今後はさらにマイナーになりそうだ。姉妹本に、『はじめて学ぶ民法――所有、契約、不法行為、家族』(有斐閣、2011年12月、初版第1刷は誤記・誤植のためリコール対象。※参照→ http://www.yuhikaku.co.jp/static_files/13615_kokuti.pdf

【法】米倉明『プレップ民法』弘文堂(2009年3月・第4版増補版)……典型的な売買契約をモデルに、想定される法律問題を時系列順に解説する。含蓄のある良書だが、初学者がその深みを理解することは困難である。

【法】道垣内弘人『リーガルベイシス 民法入門』日本経済新聞出版社(2014年1月)……財産法分野の入門書。旧著『ゼミナール民法入門』を改題したもの。教育効果や実際の機能局面を意識して、パンデクテン体系を崩した説明となっている。民法(債権関係)の改正に関する中間試案を平易に解説したコラム(53本)を挿入しており、債権法改正論議を学べる唯一の1冊本となっている。

【法】淡路剛久『入門からの民法--財産法』有斐閣(2011年12月)……放送大学の教材テキストを加筆修正。典型化された紛争(Case)から民法規範にアプローチする方法を取り入れたとのこと。

【法】近江幸治『民法講義0 ゼロからの民法入門』成文堂(2012年2月)……第1部 ゼロからの民法入門、第2部 教養民法(民法概論)。第2部は「民法講義」から文章、イラストを補訂・再製作して使用。

【法】松尾弘『民法の体系 市民法の基礎』慶應義塾大学出版会(2010年7月・第5版)……民法全体を権利主体論、権利客体論、権利変動論、権利効果論へと体系化。一冊本としては相当分厚い。

【法】新井誠・岡伸浩編著『民法講義録』日本評論社(2015年3月)……一冊で民法全体を通覧。全1035ページ。


【基本書(平成16年民法現代語化以前)】
我妻栄『民法講義』岩波書店……民法で通説といえば、おおむね我妻説を指す。不法行為法以降は民法講義としては未出版だが、ほぼ全範囲にわたって著書がある(『事務管理・不当利得・不法行為』日本評論社(1989年2月)、『親族法(法律学全集)』有斐閣(1982年3月))。なにしろボリュームがボリュームなので、マイナーな議論まで網羅的に取り扱っていることのほか、きわめて抽象的な定義付けから体系的に論じていく点に、近時の本には無い特徴がある。古いとはいえ、裁判を含め今なお実務への影響力は高く、余力のある学生は総則・物権・債権総論など、今からでも読んでおきたい。なお、文中で登場する「通説」は鳩山説などを意味し、著者がそれに対し異論を述べたものが現在の通説となっていることがある。本書で紹介される学説には、すでに絶滅したものも少なくないのである。したがって、すでに民法を一通りマスターし、学説史にも明るい学生でなければ、混乱をきたす可能性もある。我妻であるから、あるいは実務であるからといって無批判、無条件に鵜呑みにするのではなく、本書で展開されているのは基本的に戦前ないし戦後初期の理論であるということを念頭に置いて熟読されたい。

鈴木禄彌『○○法講義』創文社……全範囲完結(家族法含む)。物権法のみ現代語化にも対応。学習の便宜のためあえて体系を崩しており,早くからケースメソッドを採用するなど、時代を先取りした画期的な教科書だった。抽象的な定義や要件・効果の羅列をあえて避け,制度のあり方や実際の機能にもっぱら着目するという内容になっている。情報量も絞られており,端的に答えを知りたいときの辞書的な用法には向かないが,常に具体例をもとにして条文の趣旨が極めてクリアに語られているので,通読によって大きな効果を発揮するだろう(抽象的な定義が羅列されている教科書と併読するのが良いと思われる。)。主張・立証責任の配分について充分な記述があり,本書に取り組むことで要件事実についての理解も深まると思われる。時折挿入される図表がすこぶるよくできている点も特徴。なお,判例に言及する際に一々判決文を引用しないため、判例集や判例付六法を準備して読むべきである。シリーズ中,とりわけ物権法は名著といわれ、星野英一も自著のはしがきで「最高の水準」と絶賛している。

星野英一『民法概論1-4』良書普及会……契約法まで。但し版元の良書普及会が出版終了。家族法は放送大のテキストあり。

松坂佐一『民法提要1-5』有斐閣……かつての定番。財産法完結・家族法あり。元名大総長。我妻説立脚。30年分の判例・議論の補充要。

北川善太郎『民法講要1-5』有斐閣……財産法完結・家族法あり。前京大教授。記述平板ながら詳しい。契約責任説の主唱者。自説僅少。判例豊富。潮見&山本は北川ゼミ出身。

船越隆司『民法総則』『物権法』『担保物権法』『債権総論』尚学社(2001年4月・改訂版,2004年4月・第3版,2004年4月・第3版,1999年4月)……元中央大教授。

遠藤浩ほか『民法(1)-(9)(有斐閣双書)』有斐閣(1 総則: 2004年9月・第4版増補補訂3版,2 物権: 2003年5月・第4版増補版,3 担保物権: 2003年12月・第4版増補版,4 債権総論: 2002年12月・第4版増補補訂版,5 契約総論: 1996年12月・第4版,6 契約各論: 2002年9月・第4版増補補訂版,7 事務管理・不当利得・不法行為: 1997年1月・第4版,8 親族: 2004年5月・第4版増補補訂版,9 相続: 2005年1月・第4版増補補訂版)……かつての司法試験民法のスタンダードテキスト。事実上の国定教科書とまで呼ばれた。有力中堅学者が長老陣になるまで30年間にわたり改訂を重ねてきたため、記述は安定している。判例・通説を基礎に有力説を加え、基本的事項を丁寧に解説する良書である。判例についても文字サイズを落として事案と判旨と評価をコンパクトに解説している。自説を抑えて書いてあるため平板との声もあるが、良く読めばそれぞれの著者の個性が出ており飽きない。しかし、民法現代語化に対応したのは(9)相続のみであり、(5)(7)は1996年の改訂が最後となっている。他は2002年から2004年にかけて改訂されており、担保物権は平成15年改正に対応しているので現在でも使えないわけではないが、使用者はかなり減っている。(9)相続を除き2004年の増刷を最後に絶版となった。


【コンメンタール】
【法】我妻榮・有泉亨・清水誠・田山輝明『我妻・有泉コンメンタール民法―総則・物権・債権』日本評論社(2013年8月・3版)……かつて定評あった我妻・有泉コンメンタール(分冊)を合冊し、現行法にあわせて補訂したもの。したがって、我妻説をベースに現行法・判例等を補訂していることからその内容につき一貫性を欠いているとの評もある。ただし短答レベルの知識は網羅している。3版では民法(未成年後見関連)、家事事件手続法、非訟事件手続法、人事訴訟法などの重要改正に対応。判例は東京地判H25.3.14まで収録。

【法】松岡久和・中田邦博編『新・コンメンタール民法(財産法)』日本評論社(2012年9月)……財産法全分野を1冊にまとめたコンメンタール。コンセプトは「現在の民法に関する法状況をコンパクトに知るために最適化されたコンメンタール」(はしがき)。学説の対立状況にはあえて踏み込まず、判例・通説(多数説)に依拠した叙述を心がけている。判例の引用は基本的に最高裁のものに限定し、学説の引用も判例の考え方を理解するのに必要な限度で行うことを基本としているとされる。しかし、たとえば履行補助者の項においては、我妻有泉コンメが旧来の通説しか述べていないのと異なり、最近の批判説もきちんと載せるなど、学習者にとって配慮しているといえる。条文の重要度に応じて解説に濃淡をつけており、たとえば相隣関係の条文について注釈がなかったりする。情報量では我妻有泉コンメ、基本法コンメには及ばないがその内容は現時点で最新のコンメンタールである。判例は最判H23.4.22まで収録。なお本書の内容はTKCのインターネットコンメンタールとしても提供されている。

遠藤浩・他編『基本法コンメンタール民法』日本評論社(2005年6月-,第5版)……全7冊。スタンダードなコンメンタール。初版から年月を重ねているため執筆者の多くが民法学界の大御所となっている。民法現代語化,一般法人法改正に対応した本シリーズは、新版注釈民法より新しく、細かい裁判例や学説にまで言及しているため実務的な利用価値は高い(第一法規の判例民法シリーズは基本判例の紹介が多く、情報量が少ない)。一方で,学生向けという点ではやや情報が古いことは否めない。なお、我妻コンメでは扱われていない親族・相続の出版年月はそれぞれ2008年2月、2007年9月と比較的新しい。

谷口知平・他編『新版注釈民法』有斐閣(1988年6月-)……全26巻。未完。最新版の債権(1)-2は2011年12月に刊行されているが、発行年度が古いものも多い。研究者、実務家必携の最も信頼できる注釈書だが大部であり受験生には荷が重い。図書館で参照する程度で十分である。


【判例集】
【法】潮見佳男・道垣内弘人ほか編『民法判例百選I・II・III』有斐閣(☆I 総則・物権: 2015年1月・第7版,II 債権: 2015年1月・第7版,III 親族・相続: 2015年1月)……スタンダードな判例集。第6版では判例の差し替えが多く、Iは42件、IIは36件の判例が差し替えられた。

内田貴ほか『民法判例集 総則・物権』『同 担保物権・債権総論』『同 債権各論』『同親族・相続』有斐閣(2014年4月・第2版,2014年9月・第3版,2008年3月・第3版,2014年4月)……取り上げられている判例の数は多く、判旨の引用も長い。一方、解説は薄い。債権各論は出版年に比べて収録判例がやや古い。

奥田昌道・安永正昭・池田真朗編『判例講義民法I・II』悠々社(I 総則・物権: 2014年11月,II 債権: 2014年11月・いずれも第2版)……学生向けの参考書として定評のある判例集。百選に比べて平易なので初学者向きではある。ただし、本のサイズは百選より大きく重い。

松本恒雄・潮見佳男編『判例プラクティス民法I・II・III』信山社(I 総則・物権: 2010年3月,II 債権: 2010年6月,III 親族・相続: 2010年8月)……収録判例数は順に393、399、197件と多数。B5版1ページに事案・争点・判旨・解説と多くの事項を盛り込みすぎの感が。ひとりの執筆者が、同じ分野の複数の判例を続けて解説しているので、判例相互の関連を理解しやすのではないか。

遠藤浩・川井健編『民法基本判例集』勁草書房(2014年12月・第三版 補訂版)……ダットサン民法に対応した判例集。民法全編にわたる427件の重要判例を収録し、コンパクトに解説。

河上正二・中舎寛樹『新・判例ハンドブック 民法総則』日本評論社(2015年4月)……

松岡久和・山野目章夫『新・判例ハンドブック 物権法』日本評論社(2015年4月)……

二宮周平・潮見佳男編著『新・判例ハンドブック 親族・相続』日本評論社(2014年3月)……四六判1頁で事実、裁判所の見解、解説を収録(全184件)。最判H26.1.14裁時1595.1まで収録。基本的に初学者向けだがまとめ本として有用。


【演習書】
松久三四彦・池田清治・曽野裕夫・藤原正則『事例で学ぶ民法演習』成文堂(2014年4月)……北大の民法教授陣によって執筆された演習書。財産法全体をカバー。問題は旧試に近く、民法の論点を抑えるスタイル。解説は平易で判例・通説を踏まえており自習に向く。民法の力を蓄えるにはこれが最適とも思われる。



佐久間毅・曽野裕夫・田高寛貴・久保野恵美子『事例から民法を考える』有斐閣(2014年4月)……法学教室の連載を単行本化したもの。家族法までカバーされている。形式は新司法試験を意識した長文の事例問題となっており、旧試の形式を意識した上述の北大事例演習とは好対照をなす。全体的に難易度が高く、高度で些末な部分を問う設問が多い(特に佐久間担当箇所)ため、あまり実践的でないとの声がある。

赤松秀岳『ロースクール演習 民法』法学書院(2015年1月)……評価待ち。

松岡久和・潮見佳男・山本敬三『民法総合・事例演習』有斐閣(2009年4月・第2版)……京大教授による事例問題集。ほとんどの問題に解説・解答はなく、設問・チェックポイント、参考文献が羅列されているだけなので、自習には使いづらい。学生同士でゼミを組むにしても、問題はいずれも極めて高度かつ難解なので(司法試験レヴェルを超えているという噂も)、消化不良に陥ること必至である。やるならば心してかかること。


伊藤進『旧司法試験 論文本試験過去問 民法(LIVEシリーズ)』辰已法律研究所(2004年1月)……旧司法試験の過去問集。元旧司法試験委員の伊藤進教授の辰已での解説講義を書籍化。解説、教授監修答案(or再現答案)からなる。全26問。絶版だったがオンデマンドで復刊された。論点の解説をすることではなく、問題分析の思考過程を示すことに眼目をおいてあるため明確な結論を示していないこともある。平成15年担保法改正まで対応。

道垣内弘人・大村敦志『民法解釈ゼミナール5 親族・相続』有斐閣(1999年12月)……旧試験チックな短めの事例問題が並ぶ。理論的に高度な内容ではあるが、さすがに10年前の内容で古くなってしまっている。

  • 最終更新:2015-09-28 21:02:03

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